白坂とのコンビ作だけど意外と微妙だったかも?『暖流』

基本情報

暖流 ★★★
1957 スタンダードサイズ 94分 @アマプラ
企画:塚口一雄 原作:岸田國士 脚本:白坂依志夫 撮影:村井博 照明:米山勇 美術:柴田篤二 音楽:塚原哲夫 監督:増村保造

感想

■古い病院の改革を命じられた日疋(根上淳)は経営の大改革を断行するが、彼を愛する看護婦ぎん(左幸子)は積極的に院内のスパイ行為に協力する。病院を支配する一族は没落しつつあるが、その娘(野添ひとみ)も日疋に惹かれてゆく。リストラの恨みを買った日疋は結局病院を追い出されるが、ぎんは彼を愛し続ける。。。

■随分久しぶりに再見。あまり印象に残っていなかったけど、確かに、パンチに欠けるなあ。当時の名コンビだった白坂脚本だし、村井博のキャメラも流麗に動き回るし、明快で見通しが良い。この時代の増村映画の美点はここでも生きているけど、例えば『氾濫』とか『美貌に罪あり』(脚本は白坂ではないけど)のほうが、突き抜けてるよなあ。

根上淳を追いかけて、妾でも二号でもいいから待ってる!と左幸子が明朗に呼びかけるところが有名で、確かに勢いがあるけど、お話的に戯画としての図式劇としてもあまり斬新さはないし、お嬢さん役の野添ひとみも悪くはないけど、『巨人と玩具』『美貌に罪あり』みたいなギミック的な役どころのほうが冴えてるなあ。野添ひとみの兄役の船越英二はちょっと演技が大げさで、後の増村メソッドを先取りしている気がする。この頃は、まだ言われる通りに演じていたのかもしれない。後には、しかるべき位置に馴染んでハマることになるけど、ここではちょっと浮いてるよね。

■実は田中重雄の『永すぎた春』も観ているけど、白坂依志夫の脚本はどうなのだろう?と少し疑問を持った。若くてイケイケの時期で、勢いに任せて書きまくっている時代なので、玉石があるだろうけど、わりとハズレも多いのでは?ベテランでは新藤兼人も書きまくっていたけど、ハズレは少ない気がする。まあ、そもそもお父さんの八住利雄が超人的な多作家だったので、それに比べればまだ仕事を選んでいたわけだけど。


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