杉村春子が踊ってみた!タイトルはダサいけど、日本映画史に残るダンス映画の傑作!『美貌に罪あり』

基本情報

美貌に罪あり ★★★★
1959 スコープサイズ 87分 @アマプラ
企画:原田光夫 原作:川口松太郎 脚本:田中澄江 撮影:村井博 照明:泉正蔵 美術:渡辺竹三郎 音楽:塚原哲夫 監督:増村保造


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感想

■元地主農家の吉野家杉村春子)は戦後零落して、いまや花卉栽培(蘭の品種改良)に賭けていたが、長女(山本富士子)は若い踊りの師匠(勝新)を支えるために、田畑売り払って500万円分けてほしいと言い出す。。。

■というのはお話の一部で、次女(若尾文子は)スチュワーデスになって家を出るし、三女(野添ひとみ)はろう者で学校を嫌って家に戻って来るし、そしてそれぞれに彼氏(川口浩川崎敬三)の存在が絡むというもの。もともと『桜の園』を翻案した企画で、吉野家がバラバラになって出直す過程が描かれる。しかも、当時の大映オールスター映画で、さらにたった87分の尺で、お話にも漏れがないし、各スターの魅力もしっかり描かれるという、優等生のような娯楽映画の傑作。実際、増村監督の力量に感嘆した。

■なにしろ、山本富士子若尾文子野添ひとみという当時絶頂期の女優たちを揃えて、それぞれを個性的に見せながら芝居の見せ場を用意し、しかもその演技の質が実に高いという奇跡的な映画で、脚本も緊密によくできているけど、演出が凄くて、さすがに増村保造は不世出の才能だと思う。

■特に重要なのは、日本舞踊をモチーフにしながら、例えば吉村公三郎みたいなタッチじゃなくて、もっとクールでキレよく、踊りを描いているところで、増村にそんなセンスがあるとは思わなかった。今まで知らなかった。なにしろ山本富士子の相方は勝新太郎なので、両人とも舞踊にはガチの人だけど、なんと彼らを凌駕するのが、杉村春子。終盤の盆踊りの場面で、もう完全に見せ場をさらう。盆踊りにしては、妙に難易度の高いキレキレの振り付けだと思うけど、多分映画のオリジナル。杉村春子がしれっと踊りだす場面で、あまりにカッコいいので仰け反った。しかも、山本富士子との二人踊りで、この場面は、大げさでなく、日本映画史に残る名場面だと思う。増村にこんなセンスがあったとは、誰も教えてくれなかったぞ。映画批評家のみなさん、しっかりして!

山本富士子が実に軽妙で良いのが意外な発見で、こんなにセンスの良い演技をする人だったのだ。若尾文子はもちろん溌剌として可愛いのだけど、飛び道具のように投入される野添ひとみのキュートさには、増村の特別な愛が注がれている。泣き疲れて杉村春子の膝の上で眠っている風情だけで、愛玩動物のように可愛いぞ。完全に『巨人と玩具』のあの虫歯娘だけどね。そして、このあたりの演技のアンサンブルが、この時期の増村演出の無類さなのだと感じた。杉村春子だって、増村のやけに早いテンポのなかで、ちゃんと的確に応えている。

■増村初期の映画は、村井博キャマラマンとのコンビで、村井が東京映画に移籍したので、小林節雄と名コンビになったけど、増村+村井時代の映画は、ホントに稀有の多幸感に満ちていると思う。その頂点は『巨人と玩具』だろうと思うけど、キャメラが変わるだけで、作風がこんなに大きく変わるものなのだ、映画って不思議。

■こうしたオールスターの、文芸じゃなくて風俗大作は東宝などでも成瀬巳喜男が撮ったりしていて、非常に技巧的な秀作があるけど、本作もそうした路線の好見本。タイトルがダサくて困るし、そもそも意味不明だけど、間違いなく傑作ですよ



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