感想
■一本独鈷の流れ者(市川雷蔵)と小心な侍崩れ(藤巻潤)が港町で出会った。彼らの父親は、過去の御用金四千両強奪事件に関与していて敵同士の関係にあった。そしてその村は、佐渡金山から積み出される金の荷揚げのために、ヤクザたちが村人を攫っていた。その首魁が、侍崩れの探す父ではないのか?
■星川清司のオリジナルで、当時雷蔵ものもシリーズものが主流で、オリジナルをやりたかった時期なので、役者も監督も乗ってるのがよくわかる。でも、肝心な御用船は最後まで登場せず、やっぱりスケール的にはこじんまりした映画になるのは、大映ならでは。配役も小さくて、重要な役だけど水原浩一 が演じる。東映なら、スター級を配置するところだけど。まあ、水原浩一も渋くて良いんだけどね。
■お話としてはちゃんとできていて捻りも効いているけど、死に際の見せ場で延々と喋っているのは、昔の映画あるあるだけど、さすがに厳しいなあ。クライマックスの決闘を、ロケ撮影とステージ撮影(というかホリゾントの前)で構成した力量は大映ならではのことで、役者の表情を立体的に迫力をもって描きたいために、敢えてステージに持ち込んで、役者の顔の毛穴の中まで解像すべく、たっぷりライトを当てる。
■雷蔵も気張っているし、まああの目元の寂しさなんて、天性のものだから、誰も真似できないし、相方の藤巻潤の演技も、実はかなり良い。この人は、二枚目よりもちょっと崩した脇役と間の抜けた役がうまくて、本作も武士なのに妙に小心なところが見どころで、無職(ぶしょく)の雷蔵が剛毅なのに、肝心なところでいつも気持ちが崩れてしまう、ある意味リアルな男を好演する。見栄えもするし、いい役者だよなあ。
■金の積み下ろしに村の男たちを徴用して、御用金横流しの秘密を知ったものを殺すので、「御用船が来ると人が死ぬ」という状況設定も秀逸だったし、中途でまるで怪奇映画のように煽っていたのに、その件はあっさりスルーされるのも勿体ないなあ。幽霊船みたいで、わくわくするのになあ。
■配信原盤はHDリマスターのようで、解像度はパリパリだし、大映京都独特の陰影もバッチリ再現された秀逸なもの。解像度の高さ、色調の清明さ、映像表現はすばらしくリッチだ。工芸品とか芸術品のレベル。そうそう、フィルムの粒状性はすっかり除去されていた気がするけど。
参考
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
星川清司の代表作でしょう。日活の『人間狩り』
maricozy.hatenablog.jp
星川清司はメロドラマも書いてます。これも微妙に怪奇趣味が見え隠れ。日活の『夕笛』
maricozy.hatenablog.jp
そうそう幽霊船と言えば『吸血髑髏船』
maricozy.hatenablog.jp
