基本情報
ひとつのいのち ★★★
1962 スコープサイズ(モノクロ) 66分 @アマプラ
企画:大塚和 脚本:谷口葉子 撮影:藤岡粂信 照明:熊谷秀夫 美術:松井敏行 音楽:中村淳真 監督:森永健次郎
感想
■昭和30年代、交通事故はあたりまえで、車を運転することは人を轢くこととほぼ等しかったし、もし轢いても少しばかりの金で解決できた、今から考えれば、野蛮だった時代。。。この日本の話ですよ。
■日活の場合、二本立てのB面として、まるで教育映画的な低予算の青春映画を量産していた。いま改めて観ると、ロケ撮影が多いので時代の記録としても貴重だし、なかなか意欲的な秀作が多い。本作は谷口葉子という人のオリジナルだけど、この人どこに消えたのだろう。大塚和が連れてきた劇団民藝関係の演劇畑の人かもしれないけど。
■小児麻痺の少女(和泉雅子)に当たり屋をさせて稼がせている因業な一家のお話。金持ちの坊っちゃん(高橋英樹)の車に轢かれて、こんどは心が惹かれてゆくと、これまでの家族の仕打ちに疑問をおぼえるようになる。やがて、自分を慕っていた弟は肺炎で急死し、町内の噂で姉は恋人を失い、母(初井言榮)は警察に呼ばれる。。。
■ある意味、脚本はこうした素材の扱いに関して模範的な構成になっていて、因業な一家の崩壊と再生を描く。その転換点になるのが、小児麻痺の少女の交通事故と、かわいい弟の死。母と姉は当然のように報いを受けるからカタルシスはあるし、小児麻痺まで手術で治っちゃうから後味は良いのだけど。ただ気になるのは、まだ小さい弟を安易に死なせすぎだと思うし、台詞には未熟さを感じる。当時はまだ子どもはよく死んだ時代だろうけど。
■一方で、浜辺で拾った貝殻の小道具の活かし方など、当たり前の工夫だけど、ちゃんと効いている。ジャン・コクトーの「耳」ですね。ヒロインは当然知らないけど、大学生の高橋英樹から教えられる。二人の浜辺の幸福な戯れの記憶と、同病室の女の入水自殺が対比される構成も、よく考えるとさすがだなあ。明けきらない海辺で篝火を焚いて遺体を探す場面の撮影なども、何気なく秀逸。
■配役は全般に未熟だし、相当に地味。和泉雅子はまだ演技開眼していないし、高橋英樹もまだ芯がない感じだ。ヒロインの姉役も知らない人だよ。でも初井言榮の因業ぶりはさすがの説得力で、見事なのも。云うても、まだ若い頃なのに。
■まだこの時期、キャメラワークは大人しめな時代だけど、やっぱり随所に意表を突く動きとか、表現があり、モリケン監督は侮れない。恋人に別れを告げられた傷心の姉を捉えたキャメラが何故か横移動しはじめると死の床にある弟を捉え、その奥から姉の姿が再び現れるとか、映画本能に基づいた直感的な空間演出が飛び出すから驚くよね。モリケン監督の再評価が必要だと思う。
参考
当たり屋映画の数々。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
