基本情報
張込み ★★★
1958 スコープサイズ(モノクロ) 116分 @DVD
企画:小倉武志 原作:松本清張 脚本:橋本忍 撮影:井上晴二 照明:鈴木茂男 美術:逆井清一郎 音楽:黛敏郎 監督:野村芳太郎
感想
■松本清張ものの中でも極めて地味な映画で、再見して驚いたのだけど、とことん地味。橋本忍なのに。東京で起こった殺人事件の共犯者(田村高廣)が佐賀に棲む昔の女(高峰秀子)を訪ねそうなので、二人の刑事(大木実と宮口精二)が木賃宿で張込みを開始する。。。
■こんなに地味な映画なのに、なんと松竹グランドスコープの第1作で、正月映画。スペック、興行的には大作仕様なのだ。なにしろ東海道本線、山陽本線で東京から佐賀に到着するまでのモンタージュで12分くらいかかっている。多分、編集し直せば90分くらいに収まると思うけど、敢えて、約2時間の大作とした。
■実際、ロケ撮影もオープンセット撮影も妙にスペクタクルで、シネスコサイズの威力を見せつけようとする趣向だろう。2ヶ月に及ぶ佐賀ロケの仕出しの数とか、町並みや商店街のディテールが凄い。確実に観光映画としての側面も持っている。
■やけにテンポが遅くて、冗長にも感じられるのは、観客の心理操作のためでもあり、高峰秀子の平凡で退屈な後妻生活に感情移入させるための作戦ではある。そして、成功している。秘められたパッションを一瞬発露したけれど、次の瞬間には絶望に落とされる宿命の女。それは、どこにでもいる平凡な女のもうひとつの姿だ。その企みは確かに成功している。ものすごく、持って回った見せ方だけどね。
■おそらくは、後の東映や日活の警察もののドキュメンタリータッチにも影響を残したのではないか。本作はむしろスペクタクルな撮影効果を狙っているけど、後年、もっとドキュメンタリー寄りになる。野村芳太郎も『ゼロの焦点』で完全にドキュメンタリータッチと、作為的な劇的効果の組み合わせを会得する。『ゼロの焦点』は同じ橋本忍の脚本だけど、極端にギミック寄りで、アクロバットな展開だけど、同じ人が書いた脚本とは思えないよなあ。
