お色気モンスター松尾嘉代、爆誕!ほとんど怪奇ドラマみたいな青春映画『積木の箱』

基本情報

積木の箱 ★★★☆
1968 スコープサイズ 83分 @アマプラ
企画:三輪孝仁 原作:三浦綾子 脚本:池田一朗 撮影:小林節雄 照明:渡辺長治 美術:下河原友雄 音楽:山内正 監督:増村保造


www.youtube.com

感想

■ぼくの家族は異常だ。お色気過剰な姉さん(松尾嘉代)は、実は横暴な父(内田朝雄)の妾だったんだ。でも、ぼくは姉さんの誘惑に抗えないで惹かれてしまう。そんなぼくの心の安らぎは、学校の近くの牛乳屋のおばさん(若尾文子)とその息子だけだ。でも、おばさんには担任教師(緒形拳)が横恋慕しているらしく。。。

■なんとなく松尾嘉代が凄いらしいよと噂に聞いていたけど、はじめて観ました。なかなか観る機会がなかったのだ。あまりテレビでもやってた記憶がない。エロすぎるから?

三浦綾子の原作は未読だけど、相当に奇怪でご都合主義のメロドラマのようだ。映画としてあまり評価は高くないので、増村映画としても地味な部類だけど、なんのなんの、かなり凄い映画で、トラウマ級のインパクトを残す。この時代、大映はすでに末期的で、露骨に低予算作品だし、エロを売り物にした企画(芸術祭参加作品なのに!)。しかも若尾文子もすでにおばさん役に後退していて、実際の主役は『大怪獣ガメラ』の内田喜郎。なので、メロドラマというよりも、青春映画になっている。要は『ヰタ・セクスアリス』なのだ。音楽もおなじみの山内正だけど、いつものメロドラマ用のバロック調ではなく、むしろ怪獣映画に近くて(『ガメラ対ギャオス』ね)、陰鬱で暗い。

■この頃になると増村演出は完全に完成していて、すべてが増村メソッドで統一される。そのそも、脚本をかなり改訂している。クレジットは池田一朗だけど、実際、台詞を大幅に書き加えている。この頃の増村映画ではそれは当然のことなのだ。新藤兼人の脚本だって、自分で改訂しているからね。台詞が完全に増村台詞だし、役者の演技も完全に増村メソッド演技になっている。

■特に凄いのが主人公の姉(次女)役の梓英子で、完璧に増村演技を体現している。梓英子はもともと森美沙として高校在学中にピンク映画でデビューしたという異色の女優で、経歴だけでなんかやたらと根性が入っているのだけど、本作を観ると、ちゃんと実力が伴っていることがよく分かる。露骨に増村的な台詞を、監督の指示通りに、大声の早口で棒読みする。監督がそう指示するからだ。台詞は演じるのじゃなく、大声で抑揚をつけずにそのまま読みなさい!それが恐怖の増村メソッド演技!それでいて、ドラマの世界では浮かないで、効果としてこなれているから、かなり演技的に凄い人らしいのだ。
maricozy.hatenablog.jp

■一方で、この梓英子の濃い攻撃的な演技を完全に凌駕して、もはやお色気モンスターとしてドラマ内で台風の目として屹立するのが、松尾嘉代で、後年の若干傍迷惑なお色気おばさんキャラをすでに完成している。というか、あのキャラは、増村演出が起源だったのだな!松尾嘉代も、増村保造の演技指導を忠実に実行していて、いちいちキメキメの臭い台詞と増村ポーズを繰り出して、悪く言えば漫画演技なんだけど、これが浮き上がらないから凄い。普通にこんな演技していると漫画にしかならないのに、ちゃんとドラマの世界観に収まっているし、しかるべき場面にしっかり劇的な楔を打ち込んでいる。特に、ラストシーンの仁王立ちで登場する場面は、完全にトラウマ級のインパクトで、あんな場面演じられる人は稀有と言える。特に芝居としての見せ場があるわけではないのに、完全に「画」として映画的に絶大な効果を発揮している。あれは、映画的な離れ業だと思う。

■『爛』を観たときにも、増村保造の怪奇志向を強く感じたけど、本作も大概怪奇ロマンで、松尾嘉代は完全にモンスターとして描かれる。シナリオ開発の作法として「困ったちゃん」を主人公に絡ませるという手法があるのだけど、まさにその好例で、こんな困った人もなかなかないだろう。本当ならもっとゴシックな雰囲気で作れた気もするけど、増村の怪奇趣味は再評価されるべきと思うなあ。青春の蹉跌を描いた苦いラストの余韻とキレの良さも、増村映画の美点。



参考

maricozy.hatenablog.jp
東宝は、なんで恐怖映画の主演に松尾嘉代を?とずっと疑問だったけど、Pとか配役担当が『積木の箱』を観ていたのでは?
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp

© 1998-2024 まり☆こうじ