明友会事件をとことん数字で総括する冷徹な視点!『実録外伝 大阪電撃作戦』(2周目)

基本情報

実録外伝 大阪電撃作戦 ★★★☆
1976 スコープサイズ 92分 @DVD
企画:日下部五朗、田岡満、橋本慶一、奈村協 脚本:高田宏治 撮影:増田敏雄 照明:北口光三郎 美術:佐野義和 音楽:津島利章 監督:中島貞夫

感想

■長らく勢力バランスのなかで無風を楽しんでいた大阪の裏社会に、昭和35年、流血の大事件が勃発!地元の愚連隊上がりの双竜会が神戸川田組の組長に間違ってアヤを付けたことから、巨大組織の尖兵となった大阪やくざが、双竜会の首謀者を殲滅する「人間狩り」が動き出す。。。

■そのなかで、大阪の南原組の若い衆(渡瀬恒彦)と、双竜会の暴れ者(松方弘樹)が肝胆相照らす仲になり、「人間狩り」に対する反逆として川田組の実行隊長山地(小林旭)を的に掛けるというお話で、この二人の青春映画になっている。そして、ブロマンス風味が、少し効きすぎ。

■でも再見するとなかなか良くできていて、お話の筋は分かりやすいし、喧嘩シーンはふんだんにあるし、大阪らしい浪速風味の諧謔もよく効いているし、津島利章がガンガン派手に鳴らすのでドライブ感が高揚する。織本順吉の世渡りが出色で、愉快愉快。こういうのが観たいのよ。キャメラもみやすさ優先だし、画調も深作組に比べるとノーマルなもの。これくらいでちょうどいいよ。

■でも、東映のこの手の映画の最大の欠点は、人間だけに注目して、人間が置かれた空間を描こうとしないところで、例えば日活のモノクロ映画なら、町並みごとリアルに人間を動かして見せるのが抜群に上手かったけど、そうした視点が伝統的にないのだ。本作では結構頑張って、それらしくロケしているけど、そこはもっと丁寧に撮らないとなあ。日活なら『豚と軍艦』のあのルックになるのに。

■史実では「明友会事件」だけど、ここは在日コリアン中心の愚連隊で、これを殲滅しようとする神戸の大組織の尖兵も、もともとは在日コリアンから出来した柳川組(劇中では大東組)という、えげつない同士討ちの、差別/被差別の構図なのだけど、本作では大東組にはそうした出自は描かれない。そして、この柳川組からの視点で同時代を描いたのが、『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』なのだった。その意味では、このあたりは塊として、アングラ戦後史を描いているのだな。

■川田組の襲撃部隊を作るのに、全国から参集したやくざたちがくじ引きして3人組を作る場面とかも可笑しくて良いし、最終的なナレーションでも、具体的な人数とか数字で客観的に表現しようとする高田宏治の視点は明確だ。情念じゃなくて、事件を覚めてみている。あるのはロマンだろう。笠原和夫なら、怨念が入るけどね。そういえば、頻繁に入る字幕も、「仁義なき」みたいな誰それが死亡したとかじゃなくて、年月時間だけで、個々のやくざに思い入れはないよというのも、高田宏治らしいところだ。でも、松方と渡瀬のBL風味に振ったので、渡瀬と元兄貴の梅宮との確執が薄くなってしまったのは、作劇的に勿体ない気がしたなあ。


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