基本情報
どん底だって平ちゃらさ ★★★★
1963 スコープサイズ(モノクロ) 79分 @アマプラ
企画:岩井金男 脚本:宮内婦喜子 撮影:萩原泉 照明:吉田協佐 美術:西亥一郎 音楽:渡辺宙明 監督:森永健次郎
感想
■高速道路工事現場近くのスラムに棲む少年(西本雄司)は、母(奈良岡朋子)を喪い、継父に馴染めず、妹は自分ひとりで育てると決めるが、継父も交通事故で大怪我を負うと。。。
■その間に、末弟の赤ん坊を養護施設に引き取られるエピソードも入り、実際のところタイトル通りスラムでの「どん底」の生活が描かれる。少年は妹を育てるために小学校をネグる。でも、タイトル通り、結構しぶとく生きてゆく少年の姿が眩しく描かれて、森永健次郎の無理しない即興的な演出ぶりが気持ちよく発揮された子ども映画の傑作である。完全に忘れられた映画だと思うけど、大島渚の『少年』にだって引けを取らないし、若杉光夫のこれも忘れられた傑作『サムライの子』とだって遜色ない。どころか、演出的に優れた部分が少なくない。田村孟の脚本『少年』本は森永健次郎が即興的に撮れば、もっと良くなったと思う。
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■お話自体はよくある筋立てだけど、この時期の日活映画の特色で、とにかくロケ撮影が秀逸で、ファーストカットからタイトルへの流れで、すでに傑作を確信したけど、ほんとにその通りだったのでビックリした。「東京の空の下」という主題歌がこれまたえらい傑作曲で、渡辺宙明はこの時期映画音楽で大活躍だったけど、代表作だろう。
■脚本は宮内婦貴子で、オリジナル作。経緯は不明だけど、自主的に書いたものが採用されたのではないか?であれば、この内容が映画化できるのは日活だけだろう。しかも、本来なら大塚和が民芸映画社で撮るようなマイナーな内容だけど、なぜか日活本隊の製作。でも、モリケン監督で良かったと思う。
■主役の少年を演じる西本雄司が抜群に秀逸で、演技もしっかりしているし、なによりその目元の爽やかさと視線の強さが、実に映画むきで、ちょっとした表情の変化だけで、台詞を上回る効果をあげる。モリケン監督のキャメラアイは、その様子を見逃さない。こんなアングル、こんな撮り方、脚本には書いてないよなあという、即興的な演出がさりげなく少年の心理描写になっているから、実はかなり大したもの。冒頭のシーンで、こんな撮り方、若手の新人監督かと思うけど、戦前からの大ベテラン監督なのだ。
■幼い兄と妹の苦難と別れといえば、多分よくある趣向で、一番有名なのは『火垂るの墓』だろうけど、本作も意識しているのではないか。他にも『ゲンと不動明王』があるよ。これも参照されたのではないか。(成瀬の『秋立ちぬ』とかは、観てないか)
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■継父を轢いたブルジョア兄ちゃんと知り合うことで、少年は少しずつ成長してゆくという構成で、平田大三郎が演じるのでなんとなく信じて良いのか迷うのだけど、この兄ちゃんと出逢って、反発もすることで、ちゃんとおとなの階段を一段登ることができたのだ。ラストシーンもさらりと撮影に工夫があって、いつものスラムの汚い道路だけど、雨に濡れて陽を反射してきらきら光る、光の道に見えるのだ。兄弟はいったん散り散りになったけど、いつかきっとみんなが再会して、また一緒に暮らすのだと誓う少年の未来は、その光の道の彼方に待っているだろうと、深く納得して、主題歌に涙するのだ。
■この年の前半、『サムライの子』『非行少女』『現代っ子』『川っ風野郎たち』と立て続けに公開されていて、この路線は当時ちょっとしたムーブメントになっていたようだ。でも、本作はどうも公開の仕方が異例だった様子で、ひょっとすると全国公開されていないのではないか。キネ旬データベースで46分となっているのは単なるミスだと思うけど。アマプラの放送原盤は、時々傷があるけど比較的綺麗で、でも上映用プリントから作ったようで、パンチ穴が開いている。
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参考
maricozy.hatenablog.jp
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宮内婦貴子については、白坂依志夫が回顧してました。(大丈夫なの?)
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これななぜか成瀬が自分で製作まで兼ねて撮った子ども映画の傑作『秋立ちぬ』
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