お竜さん、阿波藍の小作争議に肩入れする!シリーズ第5作『緋牡丹博徒 鉄火場列伝』

基本情報

緋牡丹博徒 鉄火場列伝 ★★★
1969 スコープサイズ 110分 @BS松竹東急
企画:後藤浩滋、日下部五朗 脚本:笠原和夫鈴木則文 撮影:古谷伸 照明:和多田弘 美術:矢田精治 音楽:渡辺岳夫 監督:山下耕作

感想

■ヤクザ映画のプログラムピクチャなのに約2時間もあるという異様な作品。どうかしてる。正月映画でもないのに、どうしたの?

■旅のお竜さんが阿波藍に絡んだ小作争議に遭遇して、阿波踊りにあわせて行われる大博打の利権を巡って、鳴門川(天津敏)、徳政(名和宏)、観音寺(河津清三郎)の地元やくざたちのイザコザに巻き込まれるシリーズ第5作。

■本作のモチーフとなる社会問題は、阿波藍栽培の小作争議でした。後の『子連れ狼』でも描かれたモチーフですね。小作農たちが旦那衆に反抗するけど、旦那衆はやくざの力で小作争議を解決しようとする。という、実にリアルな現実。元やくざの江口(待田京介)がその間で板挟みになって苦悩する。ゆえに、人間関係がかなり複雑な構成になっている。
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■脚本が笠原和夫なので、前作などに比べるとずっと構成が緊密で、話術のテクニックなども勉強になりますね。同じプログラムピクチャでも、東映は90分を超えるのに、大映は80分ほどなので、1割くらい尺が少ない。その分、大映はドラマが薄くなる傾向は、確実にあると思う。

■やくざ社会では遠縁にあたる河津清三郎に対して、筋論で反論してきっぱり筋を通すお竜さんに痺れる。全サラリーマン(当時)が泣いた!に違いない。でも作者の興味の中心は鶴田浩二の仏壇の半次にあり、その敗残の生き方、死に様をかなり入念に描く。このあたりは笠原和夫の持ち味が爆発している。渡世の義理で殺した男の遺児を育てる男といえば長谷川伸の『疵高倉』(映画『疵千両』)なんだけど。このあたりの鶴田の屈折した人間像とか厭世感は後の『博奕打ち いのち札』に直結していると思う。

■いかにも特別出演テイストな丹波哲郎の絡み方とか、最後に乱入してとびきり乱暴な流血沙汰を起こす若山富三郎とか、営業的な妥協は少なくないけど、山下耕作のタッチもどっしりしていて、悪くない。お竜さんの殺陣だって、前作とは比較にならないくらいカッコいい。

■ちなみに、美術の矢田精治氏とは少しお話したことがあって、『怪竜大決戦』の特撮美術について説明してもらったのだ。けど、東映らしくない(?)人当たりの柔らかいおじさんだったな。懐かしいなあ。東映とはいえ、美術デザイナーはやくざっぽくはないのだった(やくざっぽいのは俳優部と照明部?しらんけど)。
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