『極悪坊主』じゃないよ!勝新の『やくざ坊主』

基本情報

やくざ坊主 ★★☆
1967 スコープサイズ 84分 @アマプラ
企画:奥田久司 脚本:高岩肇 撮影:森田富士郎 照明:加藤博也 美術:加藤茂 音楽:渡辺宙明 監督:安田公儀

感想

■ふらっと無住の寺の住職に押しかけた破戒坊主の竜全(勝新)は、寺で賭場を開帳したり、連れ込み宿を始めたりのやりたい邦題。ついには井桁一家(小松方正)の仕切る地元の岡場所を横取りしようと企むが、寺社奉行金内吉男)の妨害が。。。

■このところ高岩肇の書いた大映映画を立て続けに観ているけど、かなり酷いのでびっくりしている。浅井昭三郎のように破綻とか混乱はしていないけど、捻りも弱いし、特に女性の扱いが酷い。本作も、竜全がおぼこ娘を悪党から救ったと思わせて、手籠めにしてしまう酷いお色気場面があって、なにか捻った展開があるのだろうと思えば、それもなしで、三木本賀代は何のために出てきたのか不明なまま。竜全が報いを受けるわけでもない。同じくお色気担当の久保菜穂子もあっけなく殺されてしまうし、ほんとに女性キャラの扱いが雑。小川真由美も活かされないし。

寺社奉行や井桁組の悪行を追いながら、実はその背後にラスボスがいるらしいとなれば、もうあの人しかいないわけで、お話の捻りも効いてないよね。高岩肇は、手堅い職人という印象だったけど、そうでもないらしい。一方で女性映画の秀作もあるし、怪奇映画のカルト作もあるという、掴みどころの無い人だなあ。破戒僧を描くにしても、真面目に考えれば『競輪上人行状記』になるのになあ。(多分、意識していると思うがなあ)

■助演の多々良純山本一郎はともに好演で、彼らをもっと活かしてほしかったなあ。勝新の一人舞台ではなく、三人のチームワークを見せてほしかったな。そうそう、勝新とは食い合わせが良い成田三樹夫も好演で、大して強いわけではないのに、存在感だけで拮抗する。

大映時代劇の様式表現としてはほとんど完璧で、森田富士郎の撮影とか照明効果とか、おなじみの寺の美術セットとか、ため息が出るほど素晴らしい。デジタル臭が薄いリマスターの成果だ。なぜかキネ旬データベースでは音楽が曽根幸明になってるけど、渡辺宙明でしたよ!

■ちなみに若山富三郎の『極悪坊主』は明らかにこれを意識した企画で、この頃、兄貴はまだ弟勝新の後塵を拝していた。でも役者としては、兄貴のほうが円熟の境地までの成熟を果たした。勝新クラスの人でも、やっぱり、専属のホームグラウンドを失うと調子が狂うのだな。


© 1998-2024 まり☆こうじ