基本情報
忍びの者 霧隠才蔵 ★★★
1964 スコープサイズ 84分 @アマプラ
企画:伊藤武郎、財前定生 脚本:高岩肇 撮影:武田千吉郎 照明:中岡源権 美術:内藤昭 音楽:伊福部昭 監督:田中徳三
感想
■大阪冬の陣の後、まだ秀頼側を支えようとする真田幸村(城健三朗)は、家康(中村鴈治郎)暗殺のため、才蔵(市川雷蔵)を始めとする忍群を放つが、家康は影武者を駆使して逆に捉えてしまう。。。
■シリーズ第4作だけど、主人公が石川五右衛門から霧隠才蔵に変更になり、趣向が一新された。ただ、才蔵のキャラクター設定が不十分で、あまり主役を担っていない。腰元茜とのメロドラマも不十分で、腰元から遊女に転落し、しまいには戦乱のなかで孤独に死んでしまう茜の処遇の悪さもなんだか作者側の誠意が感じられない。何を訴えたかったのか?
■才蔵は、もういちど秀頼側に戦局を手繰り寄せれば、結局は戦国乱世の再来となり、忍者組織の値打ちが上がると打算している。そこはある意味リアルで面白い着目だと思う。家康も、豊臣を殲滅するための軍費に神経質で、また商人たちが肥え太ると嘆く。こうした経済的な視点は、現代的でいいのだけど。。。
■家康の中村鴈治郎はさすがに貫禄も恰幅も良くて見ごたえがあるし、珍しく正気(!)の役を城健三朗時代の若山富三郎がどっしりと演じるのも悪くない。二代目中村鴈治郎(後の人間国宝!)を相手にして全く引けを取らないから、凄いぞ。若山先生も、世が世なら人間国宝だね?
■でも、肝心の雷蔵が映えないのは困るなあ。忍者たちの群像劇として構想されているのはわかるけど、当時の雷蔵ファンはどう思ったのだろう?淀君を演じるのが月宮於登女で、『大魔神』の巫女役が有名。月宮乙女の名で戦前からのスター女優だったらしいけど、『大魔神』の前後に深田金之助が独立プロで撮った成人映画に出ているのが謎なんだけど。
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■最近『兵隊やくざ』シリーズを観ていたので、モノクロの大映時代劇は久しぶりだけど、コントラストの強さに改めてビックリした。忍者ものなので自然とそうなるけど、それにしてもかなりのものだ。『兵隊やくざ』もドキュメンタリータッチを狙って、基本的にはハイコントラストだけど、大映京都撮影所の時代劇はそれ以上なのだ。
■武田千吉郎の画作りは重厚かつ、なかなか意欲的で、大阪夏の陣のスペクタクルもかなりえげつないセットを組んで、さんざん爆破しているし、炎上する大阪城天守閣は当然のようにミニチュア特撮だ。このシリーズ、かなりの大作だったようだ。
■真田の忍者たちが焚き火を囲んで密談するシーンは、焚き火は見せずに、ちらちらと顔を照らす明かりで表現する。70年代くらいなら、フィルムの感度が良くなるので、実際に焚き火の明かりで撮影できるけど、この頃はまだ照明を当てないと写らない。照明部の職人さんのいい仕事。才蔵が閉じ込められる井戸の底のような牢獄も、フルスケールで作っていて、かなりの力作。監督の、こう撮りたいんや!という意図に沿ったセットを内藤昭が組んでいるようだ。
