『肉弾』じゃなくて『血と砂』だよ!

基本情報

血と砂 ★★★
1965 スコープサイズ 132分 @DVD
原作:伊藤桂一 脚本:佐治乾、岡本喜八 撮影:西垣六郎 照明:西川鶴三 美術:阿久根巌 音楽:佐藤勝 監督:岡本喜八

感想

■昭和二十年八月、北支戦線で、戦闘経験のない音楽隊の少年兵たちにヤキバ砦の奪取が下命される。。。

石原プロ三船プロ山田信夫が書いた『馬賊』を映画化する計画が五社協定の壁で頓挫、そのかわりに(?)東宝三船プロが製作した戦争活劇。だけど、痛快な活劇ではなくて、最前線で少年たちが斃れてゆく「悲しき戦記」なのだ。

■少年兵たちを率いてヤキバ砦に遠征する大人たちが、三船敏郎佐藤允伊藤雄之助天本英世という顔ぶれなので、そこは痛快なのだけど、どうも岡本監督がいらんこと(まあ、それがトレードマークだけど)をやりすぎで、せっかくのテーマ性とドラマの核が、観客の意識上で霞んでしまうのは、いつもの悪いくせ。一筋縄ではいかない変人たちの面白さと批評性はわかるとしても、さすがに長すぎるし、十分に訴求しない。少年兵たちの描写は完全に『肉弾』の前哨戦、というか、ここで描ききれなかったことにATGで再挑戦したわけだろう。やっていることは、ほぼ同じ。樋浦勉はそのまま寺田農ウルトラマンの実相寺組に一緒に出てたのは、この後の話だ。

三船敏郎も『太平洋軌跡の作戦 キスカ』なんかの抑制した演技のほうがずっと良いし、本作などは製作費の問題とか、社長業が気になっていたのではないだろうか。実際、中小企業の社長と俳優の両立は大変だったと思うよ。

三船敏郎に焦がれて最前線まで追いかける団令子が朝鮮人慰安婦役で、劇中では「金山春子」と名乗るけど、諸資料では「金春芳」となっている。日本での通称と本名ということだろう。ひとりで十人以上の男の相手をするセックスワークを無邪気に軽快に描くのは倫理的にいかがなものかと、今でこそ感じるけど、封切り当時の日本人の感覚はそうしたものだったのだ。かといってすべてが一方的に搾取される性的奴隷というわけでもなかったろう。白と黒の間のグラデーションは無限にある。それが現実だ。だからこそのモノクロ映画なのだ(ホントに?)。


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