ご存知、噴血時代劇の頂点!シリーズ第2作『子連れ狼 三途の川の乳母車』

基本情報

子連れ狼 三途の川の乳母車 ★★★☆
1972 スコープサイズ 85分 @BS松竹東急
原作:小池一雄小島剛夕 脚本:小池一雄 撮影:牧浦地志 照明:美間博 美術:内藤昭 音楽:桜井英顕 監督:三隅研次

感想

■阿波藩の圧政のため藩財政を支える特産物「阿波藍」の製造技法を握る男が脱藩し、幕府に保護を求める。阿波藩から男の暗殺依頼を受けた拝一刀の前に、公儀護送人・弁天来三兄弟が立ちふさがる。。。

■でも前半には明石柳生(松尾嘉代)と黒鍬衆(小林昭二ら)の追撃をかわす姿が描かれ、むしろこちらの分量のほうが多い。そして、明石柳生の別式女たちの密殺デモンストレーションや連鎖襲撃の見せ場が強烈なので、映画の印象がそっちに持っていかれる。しかも、別式女たちには鮎川いづみ、笠原玲子、東三千、三島ゆり子といった若山先生ご贔屓の(?)面々が台詞もなく登場し、若山先生に惨殺される。このあたり、完全に若山先生のハーレム状態だと思うんだけど、違うのかなあ?若山先生のお気に入りの女優たちを呼んだら、みんな同じような顔立ちだった(わかりやすい趣味)、という。あるいはP担当の勝新ハーレム?豪華キャストの無駄遣い感が凄いし、贅沢。

■前半がそれで、後半(というか第3幕)が弁天来三兄弟で、これも鮮烈な映像表現で派手な見せ場になっているので、とにかく奇想天外なアクション、しかも流血活劇として印象に残るのは確か。むかし、何度も観たなあ。大木実は若山組の大番頭らしいので、気心のあった仲間だし、岸田森は本作あたりで若山先生の薫陶を得たのではないか。勝新とはすでに馴染だろうけど、お兄ちゃんにも気に入られた。実際の出番は意外に少なくて、あくまで三人組の一員なのに、ちゃんと最期は串刺しで終わるところが、さすがに制作陣もわかっている。

■でも今回は先に『親の心子の心』を先に観てしまったので、逆に冷静に観ることができた気がする。初期の活劇優先のこれらに比べると、『親の心子の心』など一応ドラマ的な肝が座っている気がする。だから宮川一夫を呼んだのだろうけど。本作も、明石柳生の松尾嘉代なんて、意外に愛のない人物造形で、演技も一本調子で単に気のきつい女にしかみえない。ドラマ的にはむしろ、明石藩の「阿波藍」製造に関するくだりのほうが興味深く、江戸時代の経済問題や財政問題メインで押したほうが劇的にはリアルで面白いのになあと感じた。原作はもっと入念に描かれているかもね。

■三隅組の映像表現はますます先鋭化していて、スタッフは同じなのに前作よりも映像は暗い。リマスターが見事なので闇が際立つのだが、前作よりも照明を絞っている。あるいはラボが東洋現像所から東宝系の東京現像所に変更になった影響もあるかも。闇の艶が凄いことになっている。別式女が黒鍬衆を膾切りにする恐怖の名場面はさすがに大映京都の名人芸。クライマックスの砂丘のシーンの牧浦地志の画角のハイセンスさも、いうまでもなく鮮烈。そして、高らかに鳴り渡る桜井英顕の傑作テーマ曲。


参考

maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
同時期のこちらのほうが松尾嘉代の素直な魅力が出ていた。最近気付いた。
maricozy.hatenablog.jp

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