■確かに、あれに当てはめると、構成が細分化できるので、小箱が作りやすいし、台詞を書き進めるにしても、ブロックのボリュームが少なくて、なんとなく作業工程が見通しやすくなる。一日、何枚書けば、何週間で完成するかが見通せる。もちろん、真面目にやろうとすれば、構成を立てる前に、あるいは並行して調査、取材が大変なんだけど。
■でも芦沢俊郎の遺したこの本には、そんな話は一切出てきませんよ。大バコ、小バコの話は出てきて、例示が簡潔で腑に落ちるわけですが、読みどころは「新説・浦島太郎」「私版・桃太郎」の習作シナリオです。浦島太郎の民話には、乙姫は地上の若い男を拐かしては取り殺す色情狂だったという話が実際にあって、それを時代劇ファンタジーに翻案したもの。単純だけど、なかなか面白い。
■起承転結の全体構成なんてちょっと触れる程度だけど、各セクションの展開や書き方の具体的なテクニックが説明されていて、これが意外と参考になる。描きたいことを、表に出すのか、敢えて裏に回すのか。シーンをト書きではなく、台詞で締める「ダイアローグカット」なる技法は、はじめて知りました。まあ、演出とか編集で変わってしまうところだろうけど。
■「納まり形」という手法もあって、重要な脇役に最後に小さな芝居をさせる。まあこれも自然とそうなるよねえ。この呼び方自体は松竹の伝統なのかもしれない。今どきあまり聞かないよね。
■ちなみに、コンクール応募のためのシナリオ執筆のスケジュール感としては、
- プロット…1ヶ月
- 大バコ+小バコ…1ヶ月
- 初稿から3稿…3ヶ月
となっていて、全体で約6ヶ月を要するそうです。コンクール用のシナリオ執筆は半年かかるわけですね。調査、取材期間が入っていないので、プロットから小バコまでの間で並行して行う想定でしょうか。なかなかの難行ですね。
■ちなみに、伊丹十三も映画のシナリオ作りには半年かけていたそうで、最初の4ヶ月くらいは「全体の骨組みだけを叩いて暮らしていた」らしい。以下の本に紹介されています。この段階では、まだシナリオは書かないそうです。辛抱に辛抱を重ねて、構成を万全にしないと、台詞は書けないらしい。「いきなり書かないことが、シナリオを書くこつなんだよね」だそうです。
■ちなみに芦沢俊郎は松竹脚本部出身で、斉藤良輔の弟子筋だそうです。のちにロマンポルノも書くし、テレビ時代劇も書いている職人で、すでに故人です。晩年に出版した本ですね。




