感想
■5.15事件から2.26事件にかけて、皇道派の青年(?)将校(高倉健)と、軍を脱走して処刑された元部下(永島敏行)の姉(吉永小百合)のメロドラマと、陸軍内の皇道派と統制派の派閥争いを描いた「150分映画」。もともと『妻たちの二・二六事件』の映画化を模索していたけど、まだ関係者が健在な時代なので支障が多く、それならオリジナルでいこうと判断されたらしい。それはそれで悪くないけど、岡田裕介の企画はなぜか基本的に底抜け事案が発生しがち。そもそも山田信夫に発注するのが無理筋で、こうした骨太大作はあまり得意じゃない。山本薩夫とコンビを組んだのが間違いのもとで、なんとなく骨太な大作作家だと誤解された思う。あくまで山田信夫の真髄は日活時代にある。この脚本読んで、疑問に感じない映画人はいないと思うのだが。。。
■メインスタッフは岡田裕介ラインで、東宝時代の仲間とのいい関係を東映に移植しようとしている。音楽がキティ・レコード組で、監督が森谷司郎なので、完全に東宝青春映画の座組を引きずっているのだ。でも、森谷司郎はどんな顔して、この脚本を撮ったのだろうか。こうした大作ばかり引き受けるようになったから、早死したと思う。絶対に、心と身体をやられるよね。少なくとも、撮っていてもアドレナリンは出ない。
■とにかく、メロドラマの線と、陸軍内の抗争の線が、両方ともスカスカで、視点の斬新さとか、テーマの深耕とかもないし、全くいいところがない。岡田裕介のイメージとしてはデビッド・リーンだったらしいけど、もう脚本レベルで救いようがないので、いくら現場が頑張っても全ては虚しい。第1部「海峡を渡る愛」、第2部「雪降り止まず」と分けた意味も不明瞭で、第1部なんて、あっというまに終わってしまう。前後のバランス悪すぎ。実質的に高倉健と吉永小百合のメロドラマしか描いていないのに、冗長で舌足らずという具合。笠原和夫はこの時期『二百三高地』があったので受けられなかったのだろうけど、東映のベテラン脚本家なら、3組くらいのカップルを描き分けて過不足なく見せるテクニックを持っているのに。岡田裕介の悪いところは、東映のスタッフの力量をきちんと理解していなかったことじゃないか。
■第1部では関東軍の少佐で岸田森も登場するけど、なんだか顔色が黒いのはなんのメイク意図なのか。悪い人は顔を黒く塗るという謎のコードがあるのか?脚本で脇役が立っていないせいなのか、大作なのに配役も小粒で、時間をかけたロケ撮影も映えないし、美術装置も東宝的な豪華仕様にはならないし、妙に貧乏くさい。大作のはずなのに、なんで?誰か中抜きしてない?(ありそうだなあ)まあ、東映東京の制作機能が同じ年の『二百三高地』に持っていかれたかもしれない。実際、あっちは金かけた分がちゃんと画面に反映している。
■皇道派の動静を探るために、高倉健の前の家でスパイしている憲兵(米倉斉加年)が皇道派に共感してゆく絡み方なども噴飯もので、ホントにどうしちゃったの?小林恒夫の『銃殺』なんて、約90分で2.26事件を描ききっていたのに(ちなみに、撮影は同じ仲沢半次郎だった!)。
参考
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
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森谷司郎の監督デビュー作は、岡本喜八みたいな特撮戦争映画だったけど、実に上出来だった。
maricozy.hatenablog.jp
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でも、森谷司郎のホントに良い映画はこうした小品だった。記事がないけど『初めての旅』なんて珠玉作だった。悶絶するレベル。
maricozy.hatenablog.jp

