略称:馬鹿タンク!日本映画史に残る詩情『馬鹿が戦車(タンク)でやって来る』

基本情報

馬鹿が戦車でやって来る ★★★
1964 スコープサイズ 93分 @BS松竹東急
原案:團伊玖磨 脚本:山田洋次 撮影:高羽哲夫 照明:戸井田康国 美術:佐藤公信 音楽:團伊玖磨 監督:山田洋次

感想

■変わり者が多く暮らす山間の日永村で、村人から差別されて暮らす一家があった。母(飯田蝶子)は耳が遠く、弟(犬塚弘)は知的障がいというサブ(ハナ肇)は、長者の家の娘(岩下志麻)の全快祝に出かけたが、村民たちに嗤われると、納屋に隠していた戦車で村を蹂躙する。。。

■日本映画史のなかでも実はかなり有名な作品で、なんと團伊玖磨の書いた小説が原作という。もちろんリアルな話ではなく、そもそもその戦車はどこから湧いて出たのか?というくらいの緩いお話。大人のための童話といったイメージだろう。独特の言い回しの方言も、山田洋次のオリジナルらしい。馬鹿が戦車で大暴れ!というネタ一発で、かなりいろんな人に影響を及ぼしている。実はそんなに痛快な話じゃないのにね。

■実際、ドラマとしてのカタルシスは不十分だと思う。サブの受ける差別の有り様が、童話にしてももう少しリアルに胸に刺さらないと、第3幕が引き立たない。この映画のためにオリジナルデザインされた「愛國87号」がなかなか秀逸で、豪快なロケ撮影でのどかな農村を走り回るだけで、活劇的な興趣は十分なんだけど、もう一段テーマ性が持ち上がらない。山を踏破して、浜辺に続く戦車の轍をたどるラストは伝説的な名シーンで、弟を亡くしたサブの哀しみを間接描写で綴るその詩情は山田洋次の映画の中でも傑出していると思うけど。村人の仕打ちにもう少しリアルな生々しいものが欲しかったなあ。ほんの胡椒の一振りくらいの塩梅だと思うけど。

岩下志麻はほんの顔見世くらいで、小沢昭一なんて出てたことすら完全に忘れてた。穂積隆信も、冒頭で人物紹介のためだけにフィーチャーされるけど、あまり活躍しないし、どうも中途半端。きれいなリマスターで見ると、美術装置がかなり質感が高いので、驚いた。


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