ジーン・ハックマン追悼🙏舐めてたけど、しっかり面白かった『ポセイドン・アドベンチャー』

基本情報

The Poseidon Adventure ★★★☆
1972 スコープサイズ 117分 @NHKBS

感想

■なにしろ、むかしからテレビでさんざん放映されているのに、なぜかちゃんと観たことがなかった本作、やっと観ました。見せ場のミニチュア特撮が、意外に冴えないのもあって、なんとなく敬遠していた。ミニチュア自体は凄いんだけどね。そしてあの頃、パニック映画大流行だったよねえ。

■いわゆるドラマ的なドラマがあるわけではなくて、タイトル通り、冒険行が描かれるので、ある意味RPG的なゲーム的なお話。海底地震による津波を受けて転覆した大型客船の内部に取り残された乗員が、上下逆転した船内で、脱出口を求めて右往左往する、それだけのお話。ジーン・ハックマンが演じる、正統派の信仰からははずれた牧師が、ある意味神がかり的な直感で船尾の機関室を目指して、人々を導いてゆくという露骨に宗教的なお話。

■今いる場所を動くべきではない、このまま救助を待つべきだと主張するものは海水に呑まれ、船首を目指した生存者の一群もおそらく海水に没した。そのなかで、船尾の機関室を求めて、生きること、生還することに強烈な信念を示した一団だけが救出される。テーマ的に総括したりすることもなく、救出されたら映画の幕は降りる。今どきの映画なら、いろいろと「回収」しようとか、浅ましく考えるところだけど、要らんのだよね。

■正統派の牧師は、助からないかもしれないけど、動こうとしない「弱い者」たちに最期まで寄り添うとする。一方、ジーン・ハックマンは異端と見られようとも、「勝つ」ことにこだわり続ける。この対比がよく効いているので、テーマ云々を台詞でつらつら語らずとも、構図の提示によって明確に伝わる。天と地が入れ替わり、異端と正統が入れ替わり、神はわれわれの中にあるのだ(それが「異端」なんだけど)。

ジーン・ハックマンとともに行動する一団が、さすがにキャラのたった人々で、名優やいきの良い若手が揃っている。ジーン・ハックマンと衝突しながらサブリーダーとして大活躍する元刑事役のアーネスト・ボーグナインも生き生きしているし、なんといっても、シェリー・ウインタースの好演が伝説的な見せ場をさらう。唐突に、私は水泳のメダルを持ってるのよ!と言い出す場面は、爆笑とともに感涙を誘う掟破りの名場面で、圧巻。キャロル・リンレイが若い歌手を演じるのもお楽しみ。元街娼役のステラ・スティーヴンスは、もともとヌードで売りだした人らしいけど、体を張った熱演で、B級女優の心意気を見せつけて、天晴。

■特殊な極限状態のなかでの脱出劇は、後の時代にもたくさんあるけど、これが原型になったのだね。ある意味単調なゲーム的な展開になるのだけど、この時代はとにかくアナログな、まじでヤバそうな美術セットで実際に演じるから、その真剣味が凄いよね。そのドキュメンタルな切迫感で釘付けになる。意外にも感動的なパニック映画の傑作なのだった。


参考

ジーン・ハックマンて、これくらいしか記事がないなあ。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp

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