■以前から、ChatGPTである程度のシナリオが書けそうな気がして、いろいろ調べてみたけど、さすがに本格的な手法は著作権とか、ノウハウの商売化とかがあるらしく、商売してるIT業者への誘導記事以外にはあまり有意義な情報が見当たらなかった。
■なので、手探りでプロンプトを工夫して、短編映画(というかコントというか、スキットみたいなもの?)を生成してみました。近日中にその研究結果をここで公開したいと思います。
■イメージ的には、坂元裕二が東京芸大の授業で学生に作らせている短編映画(特に清水俊平の撮った掌編『水本さん』とか)くらいのものを狙ったけど、当然そこまでは及びません。坂元裕二に追いついたら、全脚本家廃業ですわ。それにしても、ちょっとハードルが高すぎるような。。。
■ちなみに、公開予定のシナリオは、台詞は一切人間が書いていません。ぜんぶAIに生成させたものです。指示しないのに、タイトルも勝手につけてくれましたね。
■最初にごく簡単なシチュエーションと「UFO、宇宙人、アブダクション」のお題だけ出して、自由に書かせましたが、一発で基本線はできてました。ちゃんとくすっと笑わせるネタがいくつか入っていて、感心しました。単純に笑いました。それくらいの軽いコントなら余裕でこなせます。凄いね。まあ、あくまでコント集にすぎない気はしますが。
■何度かやりとりを重ねて、第7稿まででさすがに飽きたので、いったん完成とします。というか、ChatGPTがバージョン管理を見失ってきたので、いったん終了としました。もっと推敲できそうですが、キリがありません。
■以下に、今回の実験の結果、見えてきたChatGPTの能力と思考傾向をまとめておきます。
- コントはわりと得意
- 物語は大雑把
- 普通の台詞も大雑把
- バージョン管理が苦手?
- シナリオ記法は厳密でない
- 自己分析・批評が得意
- 軽い舞台戯曲なら書けるのでは?
- 今後の検証課題
- シナリオ試作品第一弾『Ufo Girls Sketch』公開します!
- 参考
コントはわりと得意
■どうもコントはわりと得意なようです。ボケとツッコミのパターンを学習している。当然、そんなに斬新な創造的なネタは出てこないけど、AIの未熟さがかえって微妙にズレたツッコミを生成して、味といえば味になっている。あとは演出と演じ方しだいで、意外にいけるのではないか。
物語は大雑把
■これは以前にシノプシス生成のテストの際に感じたけど、やたらと冒険したがり、RPGみたいなファンタジー系の世界観を提示してくる。ジャンルはホラーやで!と指定しているのに。さすがにAIはゲームが得意ということだろうけど、勉強が足りないなあ。もっといろんな本読めよ!
■ただ、長編物語や長編映画の全体構成は基本的なバランスを理解していて、支離滅裂にはならない。けど、かなり多めの情報、設定を投入しないと、狙い通りにならないし、狙った方向性での有効なアドバイスやアイディアが出てこない。放っておくと、すぐに冒険したがるので、困る。
普通の台詞も大雑把
■いわゆるふつうのドラマっぽい台詞は、さすがに大雑把で味気なくて、ありきたりです。ちょっと長台詞を書かせてみたところ、どんな内容を書くべきかはちゃんと理解していて、それらしい台詞を書くけど、相当に大雑把な書きぶり。このあたりは、山田太一とか坂元裕二とか、もっと学習してほしいよなあ。たぶん、今後実装するんじゃないかな。なので現状では、AIで台詞書いても、シナリオコンクールでは通りません。むかしからそうだけど、テレビ局は新鮮で斬新な台詞が欲しいからです(お話は会議で作れるから!)。
■逆に言えば、あまり重要でない場面や誰が書いても同じにしか書けないステロタイプな場面は、AIに任せられるかもしれません。いやたぶん、いける。
バージョン管理が苦手?
■指示した変更が反映されなかったり、前のバージョンを引っ張ってきたり、反応の挙動が怪しいことがある。いま、GPT‑4oが無料で使えるようになっているけど、それが悪さしている気がする。ここはしっかりしてもらわないと、生産的な会話が成り立たず、ストレスを感じる。アイディアの提案じたいは、一瞬でくれるのに。
■GPT‑4oの利用がリミットに達して、勝手に旧版のGPT‑3.5に切り替わるようなのだけど、その際に成果物(シナリオ)のバージョン管理が引き継がれていない気がする。これじゃ話が通じなくて困るんだけど、無料版だからあまり文句も言えないかなあ。
シナリオ記法は厳密でない
■これは当然ながら、日本で使われる縦書きの独特のシナリオ記法には対応していない。プロンプトでうまく誘導すれば、追い込めるのかもしれない。けど、厳密にやろうとすれば、有料版が必要だろう、たぶん。
■プロは当然縦書きのシナリオ記法が読みやすいんだろうけど、素人には結構読みにくくて、ふつうに洋式で横書きの方が読みやすくて、良い気がするけどなあ。当然AIは横書きで生成するので、そのままコピペすればそれなりの体裁にはなる。でも台詞が複数行にわたる際の字下げとか、いちいち修正するのも面倒なので、なんとかプロンプトで実例を憶えさせたい。
自己分析・批評が得意
■AIに書かせたシナリオをAI自身に分析、批評させたところ、かなり的を得た改善点を提示してくるので、これは優秀。分かってるんなら、それをそのまま改善して反映してよといえば、一瞬で修正をかけてくれます。さすがに、冷静な分析は得意なんですね。
■人間だと自分で自分の作品を冷静に自己批判するのは心理的に高い抵抗感があるけど、AIはそこは切り替えが完璧かもしれない。この点は、AIの優越性があると思う。誘導すれば、嫌がらずにずっと改善を重ねて永遠にブラッシュアップしていくのだ。人間の脚本家なら、切れると思う。
軽い舞台戯曲なら書けるのでは?
■戯曲の場合、会話がメインでト書きが少なく、場面転換も少ないので、AIには向いているのではないか。高校演劇の三幕ものくらいなら、十分書けそうな気がする(実際、もう現場では使ってるんじゃないか?)。
■いまのところ、平凡などこかで見たような内容や会話のパッチワークだろうし、台詞も味がないだろうけど。なので、完成度としてはかなりレベルが低いのは確かだけど、いちおう起承転結の筋の通ったものにはなりそう。もちろん、高校演劇コンテスト受賞とかは無理。
今後の検証課題
■今回は完全に実験作なので短い一幕ものだけど、本格的な長編映画のシナリオを書かせたいと思っている。大まかな舞台設定、テーマ設定と大箱は自分で書くとして、中箱、小箱に分割するところを手伝わせたい。自分で思いつかないエピソード展開とか登場人物の絡ませ方、出し入れとか、アイディアが出てくる可能性はある。
■そこまでは自分の手(というか頭?)を主に使うとして、小箱から台詞の生成をAIに任せてみたい。小箱でシーン分割ができていれば、全体構成を学習させておいたうえで、各シーンの狙いとか登場人物とか分量とかを制約条件で指示すれば、それなりの筋の通った会話劇は出てきそうな気がする。しかも、一瞬にして!さすがにこの場合、台詞は自分で取捨選択と微調整が必要になる想定だけど、思わぬ良い台詞が出てこないだろうかと期待している。
シナリオ試作品第一弾『Ufo Girls Sketch』公開します!
■後日、シナリオの試作品第一弾『Ufo Girls Sketch』を公開します。もうしばらくお待ち下さい。でも、課題な期待は禁物だよ!

