■基本的に今のような不健全な対米従属とかやめてほしいし、中長期的な方向性としては、自衛隊を国連軍に組み込むとか、南アジア諸国で安全保障を支え合うとか、漠然とそういった国際連携な枠組みを夢を見たいのですが、本書ではもう少し短期的な視点で、現実的に国際安全保障を語ります。
■現実べったり派の語りは好きではないのですが、学者らしい落ち着いた語り口で、嫌味がないですね。慶応大の准教授で、防衛研究所の職歴もあるので、政治的な立ち位置は右寄りだと思います。
「国際社会は、国家よりも上位の権威が存在しないという意味でアナーキー(無政府)だといわれます。p.73」
■まさにそれゆえに国連が組織されたはずなのですが、設立当初から機能不全の運命でした。本来目指した姿に改善、進化することができるのか。例えばSFのなかでは、人工知能、AIが未来的にはその役割を担うことになるのですが、ホントにそうなりそうな気もするなあ。
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「指導者を守ることと国民を守ることの間に矛盾が生じる場合、プロフェッショナルな軍隊は、国民を守ることを優先しなければなりません。p.105」
■当たり前のはずだけど、なにしろ日本では沖縄や満州で捨て石にされたトラウマがあるので、今後起こり得る有事で、本当に市民、庶民を守ってくれるのか大いに疑問。と一般人は感じている。そこのところの信頼関係を再構築しないと、日本の安全保障の国内でのコンセンサスが得られない。という戦後80年で、いまだにそんな状態。
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「国際関係が少しでも日本の安全と繁栄にかなうものになることに努力するのは、日本の中心的な国益なのです。p.192」
■アメリカとかロシアとかの大国は自給自足ができるから「孤立主義」でやっていけるけど、日本はそうじゃないからです。また、人間が「個」としては人間でありえず、人間関係こそが人間そのものである(という考え方がある)ように、国も、国と国との関係性のなかでしか成立しないものかもしれません。まあ、人間と国とは同じに扱えないけど。
「戦略は強者のものではなく、強者に対抗する、さらにいえば強者との直接対決を避けて自らの生存をはかろうとする弱者のためのものである。p.207」
■これ名言で、国にも人にも当てはまることですね。われわれのような(ナイーブな)腐れヲタクが生き残って、世の中を渡っていくためには、まさにこれが必須なのです。とても有益なアドバイスだと思います。特に、若い人むけに。
軍備は「保険」です
■でも本書で一番ぐさっと刺さったのは、一定の軍備は「保険」だという表現ですね。これを言われると、反論はできない。軍隊も人殺しも嫌だけど、世の中には常軌を逸した意思主体が存在して、しかもその手には凶器を握っているという理不尽な状態は、でもリアルな現実。であれば、少なくとも自衛策は必要だし、それを外国に頼っているという頼りない状態では不安で日常生活ができない。(戦後80年もたっているのに。)
■国際的なリスクを具体的に見積もって、どの程度の「保険」に入っておくべきなのか、そう考えると軍事費に対する解はリアルに導き出せそうだ。そのために、中央政府に優秀な役人がたくさんいる(はず)のだし、日本ではあまり機能していないけど、民間シンクタンクだって利用できるし、凄いスパコンだってあるんだぞ。
価値を守るにもパワーが必要
■これも重要なところだけど、自由とか民主主義とか人権といった価値観を標榜したり、守っていくにしてもパワー(要は軍事力)が必要だという現実ですね。「価値は価値の問題で完結しない。」(p.197)ということです。
■戦争をして人を殺してはいけないのだ!という価値を守っていくためには、頭のおかしな乱暴者がいて戦争をはじめようとすれば、理を説いても納得しない場合、そいつをぶん殴ったり、行動を拘束する必要も生じるよね、という話です。ホントに哀しいことながら、自分は意識高いつもりでも、相手を選べない場合には、レベルの低い方(頭のおかしい方)に基準を合わせざるを得ないということは、この世の中ではよくあることです。
■大国の意識水準がどんどん低下する現状のなかで、正しいと信じる人類共通の価値観を守っていくには、パワー行使に関するコストが高騰しているともいえるでしょうね。ああ、いやだいやだ。。。
