お待ちかね「松たか子劇場」の開幕!坂元裕二の夫婦モノは定番の面白さ『ファーストキス 1ST KISS』

基本情報

ファーストキス 1ST KISS ★★★☆
2025 ヴィスタサイズ 125分 @TJOY京都(SC10)
脚本:坂元裕二 撮影:四宮秀俊 照明:秋山恵二郎 美術:杉本亮 音楽:岩崎太整 監督:塚原あゆ子

感想

■夫が列車に轢かれて死んだ。妻は環状道路の崩落事故に遭遇すると、15年前の彼との出会いの場に戻っていた。その後、なんども時間を遡行しながら、夫の死を回避しようといろんな手を試みるが。。。

■というよくあるファンタジー設定で、『恋はデジャ・ブ』でもおなじみのタイムループものだけど、そこは坂元裕二なので、単なる若者向けの恋愛劇ではなくて、意外にもミドル、シニア層向けの「夫婦善哉」ものになっている。なにしろ、松たか子は45歳のおばさんを演じる。というか、ほぼリアルな実年齢を隠さずに演じる。

■だから恋愛劇ではなくて、夫婦生活がいかに不毛で苦痛な営みであるかを、例によって軽妙かつ辛辣に描きながら、夫婦の心のすれ違いを解き明かして見せるし、その関係性の再構築を見せて、感動させる。コメディとしても当然秀逸だし、地に足のついたタイムループファンタジーとしても秀逸。

■とにかく、『カルテット』とか『大豆田とわ子と三人の元夫』で開発した、松たか子の絶妙なコメディ演技がここでも見どころで、よだれを垂らす松たか子、大型犬にもみくちゃにされる松たか子、ガオーと吠える松たか子、寝言で「眠い」と呟く松たか子、みんなが大好きなあの「松たか子劇場」が堪能できます。もうそれだけで、お腹いっぱい。クライマックスの夫婦のすれ違いと別れのシーンでは当然しんみりするけど、日本映画でのコメディ演技に新機軸を開いた松たか子の快進撃は続くのだ。

■おそらくサンドラ・ブロックのラブコメ映画などが参照されたようで、サンディー姉さんほど弾けはしないけど、中年女性のリアルなくたびれ感とそのチャーミングさをこれほど稀有な表現に昇華した人を知らない。誰にでも真似できる芸当ではないのだ。

■そして驚くのが、15年前の松たか子。この設定をよく本人が納得したものだと感心するけど、CG処理による若返り効果は見ものだ。カットによっては、CG処理無しで、メイクと照明効果で完成させたものもあるような気もするけど、デジタル処理でシワを消し、肌のたるみを引き上げて引き締め、かなり高度な処理を行っていると見た。日本映画はなぜか老けメイクが苦手で、いまだにうまくいかないけど、何故か若返りの技術は卓越していたのだ。なんで?



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