電話の向こうにその「声」を聞くために…NHK土曜ドラマ『64』をイッキ見!(ネタバレ有り)

2015 NHK土曜ドラマ 64(ロクヨン) ★★★(☆)
原作:横山秀夫 脚本:大森寿美男 撮影:佐々木達之介、畑村季里 音楽:大友良英 演出:井上剛、増田靜雄

■「陰の季節」から始まる「D県警シリーズ」に属する長編小説のドラマ化。ちなみに、「第三の時効」から始まる「F県警強行犯シリーズ」(モデルは山梨県警)とは別のラインに属する。傑作『クライマーズ・ハイ』を撮ったチームが再結集して、横山秀夫の警察モノを例によって熱く料理する。そこは非常に良いんだけど、お話が錯綜しすぎで、なかなか腑に落ちないところがあって、スッキリしない。それは原作由来のもので、むしろ短編原作のほうがスッキリしていて、完成度が高いと思う。でも、映画版の『64』よりは、こちらのほうが面白い。本放送時に見ているけど、久しぶりに再見。

■3話「首」、4話「顔」のあたりが傑作で、三上広報官の娘が行方不明という話、未解決の「ロクヨン」事件の視察にことよせて、県警刑事部長のポストを巻き上げて天領としようとする警察庁の企みと県警刑事部の反抗、匿名報道で揉めて、警視総監の取材ボイコットを主張する記者クラブの懐柔対策といったエピソードが、かなり錯綜し、第3話で、警視総監視察の前日に「ロクヨン」を思わせる誘拐事件が発生、第4話では報道協定を巡る記者会見に東京マスコミが押し寄せてリンチの場と化す修羅を熱く描いて、このあたりは非常に充実しているし、横山秀夫の醍醐味。

■ただ、前半をさんざん引っ張った警視総監視察の件があっけなく中止となり、最終的に「ロクヨン」事件が解決してしまうことで、刑事部長ポスト召し上げの件も雲散霧消してしまうのだけど、なんだか竜頭蛇尾ながっかり感が残るのは確か。そこはかなり根本的な弱点だと思う。横山秀夫のドラマは県警内部の警察官たちの垂直水平方向の確執を描くところに独壇場があり、中盤のD県警と地元記者クラブの内部事情のあたりが期待通りに見応えがあるのに比べると、「ロクヨン」の事件の顛末に妙味が乏しいのは、原作由来の難点だろう。三上広報官の娘が行方不明なまま終わるのも、原作小説を読めば納得がいくのかもしれないけど、あまり有効に機能していない気がする。電話の向こうに、姿のない「声」を聞くという行為自体がこの物語のテーマなので、構築としては理解できるのだけど、実際にドラマとしては、多くの要素が錯綜して、テーマ性が十分に凝集していないと思う。

■先日のフジテレビの10時間記者会見を見ていて思い出したのが、まさに本作の7時間マラソン記者会見(公開リンチ)の見せ場で、まさにそのままの姿が、フジテレビの会議室で発生していた。しかも本作の主演はピエール瀧だし、永山絢斗新井浩文榊英雄と、「レッドパージ」ならぬコンプラパージ」(純粋に犯罪です)された男優陣が勢揃いで、隔世の感がある。というか、なんだか異様に密度が高いね、なぜ?事故物件?10年前のドラマだけどね。

■F県警強行犯シリーズで有名な榎戸耕史の演出と比べると特徴が好対照なんだけど、こちらは非常に技巧的。いまどき珍しい極端な広角レンズ使いから、予想通り撮影は佐々木達之介で、実際かなりいい出来。中継ぎで入る畑村季里もそのスタイルを的確に踏襲して、凌駕するくらいのセンスを見せる。担当した3話は映像スタイルの面で完成度が高い。アングルも自在だし、たくさんの素材を撮って、編集で精選してまとめ上げるスタイルで、非常に贅沢な作り方。一方、榎戸耕史のドラマは、多分無駄なショットは撮っていないし、入り組んだ編集もなくシンプル。でも、モンタージュの強固さや全体的な完成度とかバランスは勝る。音楽は、当然ながらNHKが優位で、まあ贅沢この上ない。

中村優子が婦警役で出てたり、古館寛治が1シーンだけ出てたり、永山絢斗がまだチンピラだったり、なかなか味わい深いけど、とくに永山絢斗はまだまだ未熟だったなあ。2020年には端正な『上意討ち』を演じているからね。柴田恭兵なんて、いまだに『あぶない刑事』なんてやってるから、驚異的だと思いますがね。

参考

maricozy.hatenablog.jp
NHKの井上剛といえば、『その街のこども』ですね。
maricozy.hatenablog.jp

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