4Kリマスター版で観る『海底軍艦』(@「午前十時の映画祭14」)でおじさん俳優を堪能する

基本情報

海底軍艦 ★★★
1963 スコープサイズ 94分 @アレックスシネマ高槻(SC9)

感想

■なにしろ昭和39年の正月映画。もともと正月映画として別作品(調べたけど不明)が予定されていたが、頓挫したため、急遽製作が決定され、2ヶ月位の短期間で突貫撮影がなされた。そのしわ寄せは特撮班に主に影響して、臨時に3班編成で乗り切った。なので、B班は川上景司、C班は中野昭慶が監督しているという。それぞれ誰がキャメラを回したのか気になるところだ。

田中友幸は自分の企画をずっと机の引き出しに温存していて、チャンスがあれば、そのストックから押し出すことを心がけていたらしい。本作もそんな雰囲気で、脚本開発がほぼ終わった企画が、正月番組の穴埋めに急浮上したため、制作期間がとれなかったということ。それでも、本編班はずいぶん贅沢(とはいえムー帝国に一点集中だけど)だし、特撮班もなかなかスケールがでかいので、正月映画用に特別予算が出たのではないか。お金に厳しい東宝なので、途中で予算が膨らむことはなくて、最初から予算枠が確定していたはずだから。

■正直、『妖星ゴラス』などと比べると見劣りするけど、本編の演技陣の充実は、さすがに圧巻で、高島忠夫は単なる狂言回し(実際はそれ以下)だけど、田崎潤上原謙の演技は見事なもので、見ごたえがある。上原謙の脇役時代の代表作の一本として推して良いのではないか。『妖星ゴラス』も素晴らしかったけど、この演技的な説得力とか育ちの良さが発する包容力はなかなか余人を持って代えがたい。

■時々夢想するのだけど、この時期の東宝劇団民藝と提携していれば、特撮映画の配役には、千田是也ではなく、滝沢修が科学者役で出ていたはずで、宇野重吉だって出ていただろう。例えば本作では上原謙の役どころがピッタリだけど、全くニュアンスが違うよね。劇団民藝は日活との提携が終わった時期に、ちゃんと大滝秀治は科学者役で東宝に定着してるし、この時期でも老け顔なので出ていたかもね。

■それにしても、田崎潤ははまり役で当たり役。時々主演作もあるけど、むしろ脇役でいい味を出しているし、その中でも代表作に間違いないだろう。ちなみに、轟天建部隊基地の島には「協力的な土人しかいません」と応えているけど、要は非協力的土人はみな殺したという意味で、物騒なことだ。まあ、なにしろ戦争キチガイなので。ホントはそっちの報いも受けなければならないはずなのだ。

■戦後約二十年の雌伏を経て再び大日本帝國が世界に雄飛するために、日本が敗戦国の地位を脱するために、海底軍艦轟天が出撃するけど、戦争を放棄した平和憲法の理を説かれて、国連に協力して世界平和のために転用するべく改心する神宮司大佐。二十年ぶりに再会した娘に諭される湖畔の名場面は、4Kリマスターの威力で、さすがに綺麗。絶妙な疑似夜景だ。これ配信ドラマとしてリメイクすれば、ムウ帝国側ももっと描けるし、轟天建部隊内での対立とか、建部隊基地の島での土人の反抗とか、人間ドラマが丁寧に描けるよね。山崎貴ゴジラの2作目なんてやってないで、海底軍艦のリメイクを撮ればいいのに。

海底軍艦はほぼ1時間経過後にやっと登場し、その後は一気呵成にムウ帝国に攻め込むと一方的に勝利する。さらに、ムウ帝国皇帝が登場するのも、終幕に入ってからで、実は登場シーンも非常に少ない。このあたりの劇的構成のバランスも独特だと思う。特撮シーンはむしろ見飽きてくるのだけど、4Kリマスターによって本多監督のドラマパートの秀逸さや、役者の演技自体がじゅうぶんにマジカルな「特撮」であるということを、再発見させる効果があると思う。

■ちなみに、東宝の子会社だった東京現像所が業務終了したため、そこで保管されていた東宝映画のオリジナルネガが国立映画アーカイブに移管されたらしい。本作も、同アーカイブ所蔵のオリジナルネガから4Kリマスターされていて、そのことが最後にクレジットされる。東宝映画に関する著作権等は当然東宝が持っているはずだけど、その物理的なフィルム自体は国立映画アーカイブセンターが保管しているということらしい。おそらく東宝は同センターに保管料を支払っているのだろう。その方が自社保管するより安いから。なにしろ同センターは国立機関なので、公費が投入されているからね。


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