「太古の魚」 TOURIST ATTRACTION <秀作>
■南米の独裁国で湖底から太古の怪魚が発見される。独裁者はその独占を図るが、怪魚は研究室から脱走して、なんと仲間たちを呼び始める。。。
■ディーン・リーズナーという人のオリジナル脚本らしいけど、なかなか痛快な秀作。のちの大映特撮に通底するアイディアが一杯で、変な偶然だなあ。肺魚ににた怪魚はまるでギャオスのように超音波を収束させて研究室のドアを切り裂くし、大群で押し寄せて巨大なダムを決壊させ、独裁者を押し流すし、まるで大魔神のよう。独裁者はヘンリー・シルバ。
■そうしたドラマとアメリカからやって来た調査隊(富豪らしい)の中年男女の倦怠期っぽいやり取りが並行して描かれて、喧嘩別れしそうになるけど、最終的に男が傲慢さを反省してダム決壊の被災支援の作業なんか始めるのを目にして、やっぱりあの人にはあたしが必要なの❤て感じで元サヤに収まるあたりが、妙にしんみりする(それ要るか?という話も)。
■しかもそれを演じる女優(ジャネット・ブレア)が完全におばさんなので妙にリアル。若い頃はすごい美人だったけど、いまやそれなりに草臥れてきたとはいえ、まだ認めたくないみたいな感じのリアル感。あくまで大人向けのドラマですよ、ということだろうか。(ホンマかいな。)
■でも実際、自然そのものともいえる古来の神は、ドメスティックな軍事独裁者も、米国からの植民地的侵略も、ともに許しはしないのだという政治的正義感溢れるお話で、なかなか骨太な寓話なのだ。
■撮影はジョン・M・ニコラウス.JRで、普通に硬い出来。これ今のVFXで映画化すればいいのになあ。
「蟻人の恐怖」 THE ZANTI MISFITS <秀作>
■ザンティ星から一方的にUFOを着陸させると脅迫してくる。目的地の砂漠地帯を封鎖するが、強盗犯カップルが侵入して、UFOから這い出した異星人と遭遇する。。。
■ジョセフ・ステファーノの脚本としては上出来の部類で、批評性に富む。高度な文明人ザンティは意識高いから仲間内で殺すなんて残酷なことはできないので、死刑囚をあえて野蛮な地球に送り込んでおいて、始末してくれてありがとう、という高度に皮肉な話。
■演出、特撮含めて映像面では残念なのに、アイディア抜群の一作。撮影はジョン・M・ニコラウス.JR。若いギャングがブルース・ダーンで、その相方の女(オリーブ・デアリング)がさすがにちょっと老け過ぎで、いかがなものか。このシリーズ、妙に熟女志向が高くて、先の「太古の魚」もかなりのものだった。このジャンルて、普通は若手の女優が出るものだけど、Pの趣味なの?
「クロモ星人」 THE MICE
■クロモ星と交信ができ、互いに人を電送して交流する計画が持ち上がるが、地球側の志願者は囚人だった。しかもクロモ星から先に電送されたのは、グロテスクなクラゲ状の生き物で。。。
■クロモ星は先に送ったのはわが国の科学者だから早く返送しろとせっつくけど、何も言葉を発せず、研究所の池で気持ち悪いパン生地状の物体を育ててずるずる摂食するし、地球人を襲って殺すし、どう考えても知性的な生き物に見えない。なにしろ、地球側だってたちの悪い囚人を送ろうと考えていたのだから、人のことは言えないのだ。あれ、実はクロモ星の下等生物じゃないの?という皮肉。そこを突き詰めるとお互いに気まずくなるから、殺さずにさっさと返送して幕を引こうと、分別ある科学者は考えるのだった。彼らは、所詮実験用のモルモットに過ぎないのだ。なんて、意地の悪い話。
■撮影はコンラッド・ホールだけど、怪奇映画タッチは控えめだし、あまり冴えない。構図のとり方とか、素早いピント送りとか、奥行きの深いパンフォーカスとか、さすがの技巧だけど。なにしろ、クロモ人のリアル志向のクラゲ怪人みたいな気色悪さが、いかにもアウターリミッツ。不定形のクリーチャー造形に新境地を開いたよね。