フィリピン人民、かく戦えり『バターンを奪回せよ』

基本情報

Back to Bataan ★★☆
1945 スタンダードサイズ 95分 @DVD

感想

■1942年、バターン半島の奪回のため、現地フィリピン人によるゲリラ作戦を命じられた米国大佐(ジョン・ウェイン)は、飛行場奪還はできかなったが、フィリピンの革命英雄アンドレス・ボニファシオの孫(アンソニー・クイン)を「バターン死の行進」から救出する。だが、その恋人は日本軍に協力していた。

■まだアジア・太平洋戦争中に製作されたので、戦局の動向に応じて、脚本の改変や編集の追加が行われたらしい。捕虜収容所が解放されたので、その場面を冒頭と巻末に追加し、そのとき実際に解放された兵士本人の階級や名前などもそのまま紹介する。米国の国内プロパガンダ映画だし、広義の報道映画かも。

■監督は後に『十字砲火』を撮るエドワード・ドミトリク、撮影はヴァル・リュートンとリュートンタッチを作り上げた伝説のキャメラマン、ニコラス・ムスラカという、なかなか不思議な組み合わせ。硬質なモノクロ撮影とか、ジャングルの陰影とか、さすがに上出来だし、どうやって撮ったの?という特撮的なスタント戦闘場面もあり、さすがに凝った撮影。でもお話の運びはいまいちまとまりを欠き、ちょっと残念。

■当然のことながら、日本兵は極悪で、米国旗を降ろさない校長を、掲揚ロープで生徒たちの前で絞め殺す(!)し、本間中将も見るからに酷薄だ。最前線の日本軍兵士たちは日本語すら話さず、なにやら怒号している。フィリピン開放に米国と米兵がどれだけ尽くしたかということを謳っており、米軍に協力して殺される少年に象徴されているけど、アンソニー・クインとフェリー・フランケリ(フィリピン映画界からの参加らしい)のメロドラマの部分をもっと観たかったなあ。ダリセイ・ダルガドという女性は日本軍に協力しながらも、実は米軍に情報をそれとなく流しているという複雑な役柄なので、それだけで映画になるよね。


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