基本情報
ボルテスⅤ レガシー(吹替版) ★★★★
2024 スコープサイズ 98分 @TJOY京都
感想
■実はオリジナルの『超電磁マシーン ボルテスⅤ』は観てない(はず)。なぜかフィリピンでは国民的人気アニメとなっていて、現地でオリジナルに忠実に実写化された。全90話のTVシリーズのいわゆるパイロット版(1、2話)をブラッシュアップして再編集した映画なので、クオリティの問題とか、編集のギクシャクは当然のこと。そもそも東映印なので、細かいことは気にしない。作っている方も、観る方もね。それが共同幻想?
■でも、これ意外にも実にいい映画ですよ。テーマソングで燃えればいいやと思って、半分舐めて観にいったけど、感涙、感涙。クライマックスのロボ同士のどつきあいは最高の贈り物。よく、あの呼吸がわかったなあ。オリジナルを超える、燃える演出が多数で、フィリピン映画界、アクション映画に関してはしっかりした方法論を持っているようだ。当たり前だけどね。バイザンガに顔面に食らったパンチを押し戻す、燃える逆襲戦は主題歌アレンジの劇伴が最高に機能した名場面。映画館の大スクリーンで観たかいがあったというもの。
■さすがにCGには力が入ってますよ。ボルテスVの活躍については、何の不満もない。実によくできている。ハリウッド映画だと、ロボの動きがカートゥーン的になったり、やからとカットが細かったり、カメラが動きすぎたり、観ている方の気が入らないのだが、そこは東映テイストで、実にシンプルで気持ちいい。どんだけCGに金かけているのかと心配したけど、ちゃんと怪獣広場や原野で戦うので、周辺環境のデータ量は少なくて済む。リアルなビル破壊とかもやってない。というか、こんなところまで日本の70年代アニメテイスト。ハリウッドみたいに、雨降らしたり、ナイトシーンにしたりしません。ドピーカンの白昼堂々、どつきあいます。すかしたところは一切なし。真正面からぶつかります。正直、特撮研究所のミニチュア特撮で観たいよなあと予断を持って観ましたが、CGで問題ないよね。過不足がない。
■オリジナル観てないので、三兄弟の母親が死亡するとは予想してなかったため、クライマックスは真剣に泣かされましたよ。いまどき、あんなにくどいほど押す演出もないけどね。これをストレートドラマでやると、完全にお涙頂戴のクソ演出だけど、活劇ではバランス上お涙頂戴にならないので、悪くないのだ。お母さんの大活躍も、オリジナルを超えている。吹替版では堀江美都子が演じるから、ありがたい限りだ。そうそう、吹替版、良いできですよ。
■感心したのは、5人はほぼコックピット内の芝居なのに、それでちゃんと場面が持つところ。主演のレッド:スティーブとか、ピンク:ジェイミーの目鼻立ちのくっきりした濃い顔立ちが、実にコックピット映えするし、ヘルメット映えする。顔面演技とキャメラだけでこれだけ成立するとは、恐るべし。決して編集がまずいわけではないのだ。それに劇伴も王道のアレンジで、劇的効果抜群でしたね。気持ちいいことこの上ない。
■配信ドラマのパイロット版を映画館で上映するパターンが最近増えていて、例えばアマゾンオリジナルの『沈黙の艦隊』なんて不完全燃焼もいいところで、金返せと思いましたが、本作はそこも成功してますね。単体として十分なカタルシスがあり、今後のドラマ展開にも期待が生まれる。正直、この調子でねっとりとドラマを作っているなら、ぜひ観たいし、特にジェイミーの活躍に期待大。監督は、マーク A. レイエス Vというおじさん。いい腕ですよ。