魑魅魍魎が寄って集って他人の土地で一儲け!森功の『地面師』

■さいきんネットフリックスで始まった大根仁の『地面師たち』とは違いますよ。『地面師たち』の原作小説はこれです。

■こちらはあくまでノンフィクションで、積水ハウス事件をはじめとする地面師案件の数々を追ったものです。単純にいって、小説版のほうが面白うだろうと思います。本作は、あくまで取材結果に基づいたノンフィクションで、しかも事件の全容がわかったうえで書いているのではないので、かなり茫洋としています。複数の事件が錯綜して、実際警察も及び腰で事件化を見送るほど、利害関係が錯綜していて、詐欺の首謀者なのか、被害者なのか、犯行の全体の絵図が判然としないのが、地面師案件の特徴らしいです。なので、いつまでたっても、真相が明らかにならない。

■その意味では、森功が書いているのに、どうも隔靴掻痒の感を拭えず、いまいち気が行かない。逆に言えば、それほど闇が深い業界らしい。当然、資格を持った札付きの司法書士が悪意で関与するし、素行が悪いので資格を剥奪された弁護士、いまは弁護士事務所のいち事務員が認知症の弁護士の事務所を実質的に乗っ取って、名義利用して悪さを企むし、もうアングラ世界はなんでもあり。地面師たちも堂々と警察に出頭するし、それでいて不起訴になるし。でもそれは、終戦直後ではない、今現在の東京の姿。ひたすら開いた口が塞がらない顛末の数々で、不動産業界は魑魅魍魎の世界と再認識しました。

参考

maricozy.hatenablog.jp
森功といえば、この本の印象が強烈ですね。

全く別の事件ですが、同根とも言える事件を追ったこの本も凄いですよ。顎が外れるレベルで、銀行業界の闇の深さも底なし沼。

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