歴史スペクタクルの大作だった『ノートルダムのせむし男』

基本情報

The Hunchback of Notre Dame ★★★
1939 スタンダードサイズ 116分 @アマプラ

感想

■なんだか脳裏では『オペラ座の怪人』とごっちゃになっていた本作、あたりまえだけど、全く違う話で、怪奇映画というイメージだったけど、結構な歴史スペクタクルで、超大作ですね。

■15世紀後半のパリ、ジプシーへの弾圧のなか、美しい娘エスメラルダに惹かれたフロロ伯爵の邪心と、その庇護でノートルダム寺院の鐘つきとなったカジモドの三角関係を描く。エスメラルダは魔女裁判の結果、死刑が宣告されるが。。。

■映画では、なんでフロロ伯爵が醜いカジモドを拾って育てたのかは省略され、フロロがいい人なのか、悪い人なのか明確にしない。グーレンベルクの印刷機を排斥しようとする保守的で差別的な価値観を持つ男で、ジプシーの娘に邪心を抱き、殺人まで犯す男なので、単純な悪役のようにも見えるけど、カジモドに対する態度の部分に、なにやら含みをもたせる。単にカジモドを奴隷として使役しようと思ったのか?そうでもないのか。原作ではもともと真面目な聖職者だったらしいが。

ウィリアム・ディターレの演出はメリハリがきいているし、基本的に歴史スペクタクルとして撮っているので、オープンセットとかモブシーンの厚みは見ごたえがある。スクリーンサイズがスタンダードなので、とにかく奥行きの密度が凄い。作画合成も駆使して、見事な厚み。ヒロイン、モーリン・オハラの顔は真っ白に飛んでおり、いかにも古い時代の撮影技法だが、チャールズ・ロートンの演技とか特殊メイクはさすがにハリウッド。この人、ウェルズ原作の『獣人島』でモロー博士を演じているので、これはぜひ観たいなあ。

■原作ではエスメラルダは死刑に処せられ、カジモドは殉死するらしいけど、映画ではハッピーエンドで終わる。単純に、原作通りのほうが良かったと思うけどなあ。特に、カジモドの描写に既視感があるのは、ディズニーの『ノートルダムの鐘』を観ているからだけど、ずいぶん昔のことだな。


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