空翔ぶ文豪少女が日和った大人にドロップキック!『響』

基本情報

響 ★★★
2018 スコープサイズ 104分 @DVD
原作:柳本光晴 脚本:西田征史 撮影:鍋島淳裕 照明:かげつよし 美術:五辻圭 VFXスーパーバイザー:山口聡 音楽:伊藤ゴロー 監督:月川翔

感想

■突如出現した天才文豪少女・響が売られた喧嘩にコンプラ無視のゲバルト攻撃を加えながらも、処女作は新人賞受賞、芥川・直木賞ダブル受賞に向けて快進撃を続ける。だが大人たちの心配の種は彼女の暴力性向にあった。。。

■欅坂46を卒業した在籍中だった平手友梨奈が映画主演を張った学園バイレオンスドラマ?じゃないけど、やってることは『男組』みたいな感じの痛快暴力ヤンキー(?)ドラマ。いや立派なスケバン映画ですね。そういう意味では本来東映でやるべき企画だけど、れっきとした東宝映画なのでした。

■もちろんリアルなお話ではなく、漫画の映画化なので、響は校舎の屋上から後向きに自由落下してもかすり傷ひとつなく、「あーびっくりした」で終わる。そういうリアリティラインの映画である。だから真面目に観る映画ではない。そもそも、響のキャラクターは相当にサイコパス風味なのだ。

■響に絡む嫌味な大人たちも相当に戯画化されていて、北村有起哉も、いくらなんでも女子高生にそんな絡み方しないだろうというゲスな台詞を吐くし、尊大な柳楽優弥もいわゆる極端な「キャラ」風味の味付けで、変な演技には定評があるので魅せるけど、そんな奴はいない。つまり、主人公の純粋な怒り、義憤を引き出すための道具として振る舞うことになる。そうした「ためにする」作劇はさすがに大人の観客にはキツイ。

■意味ありげに登場する貧乏作家役の小栗旬のエピソードも尻すぼみで、これも非常に作り物っぽくて、作劇としてはペラペラだ。アヤカ・ウィルソンとの友情物語も、こうしたお話では付き物ではあるが、それ以上の感慨は沸かない。無理矢理感が拭えない。

■でもこれが意外に面白く見れてしまうのは、主演の平手友梨奈の持ち味である危うげな個性と、その硬派なキャラクターにぴったり寄り添った響という人物設定の虚実皮膜の間をうまく突いた企画の勝利だろう。実に上手い商売で、映画デビューとしては大成功。それだけで観る価値のある映画になるから、スターって凄いね。

■さらに、あまり説得力のない漫画的なお話を映画的に着地させた月川翔の演出は褒められて良い。所々に光と影の演出で心理描写を狙ったり、見事にメリハリをきかせたアクション場面も秀逸。特に見どころなのは狂言回しでもある北川景子の落ち着いた演技で、いつのまにかベテラン女優の仲間入りだね、セーラーマーズ!(古すぎか)また近年すっかり怪優兄弟と化した高嶋家の弟、高嶋政伸をやりすぎない塩梅で上手く配置したのも効果的。役者の演技についてはわりとコントロールが効いている気がするので、要注目だね。

参考

平手友梨奈欅坂46時代の傑作の数々。
特に『二人セゾン』と『語るなら未来を・・・』が個人的にはお気に入り。文句無しの傑作MV。

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この曲で泣けるのは基本的にティーンエイジャーだと思うのだけど、おじさんも何故か泣けます。魂が泣くんです。名曲『エキセントリック』

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