公害の町・富士市を舞台に男(ヤクザ)どもの思惑が奇妙に錯綜する!『関東幹部会』

基本情報

関東幹部会 ★★☆
1971 スコープサイズ 86分 @アマプラ
企画:園田郁毅 脚本:鴨井達比古、来栖三郎、伊地知啓 撮影:山崎善弘 照明:松下文雄 美術:千葉和彦 音楽:玉木宏樹 監督:澤田幸弘

感想

■渡哲也主演の関東シリーズの第二弾で、監督はフレッシュな澤田幸弘。でも、脚本がかなり錯綜しているので、なかなか一筋縄ではいかない、ちょっと奇妙な映画なのだ。

■寺田(渡哲也)は尾沢組の若頭で、関西の大場会が関東に進出して富士市を拠点としつつあるので、これを排除するために故郷でもある富士市で活動を始める。彼には幼馴染でワケアリの地元博徒・神尾(長門勇)を再興して関西勢を制圧できないかという思いがあったが、出所した神尾組長は大組織に使われる寺田には不信感しかなかった。。。

■なかなかひねくれたお話なのだが、端的に言って寺田組長の力量不足で関西勢の侵攻を抑えられず、さらに組幹部の命令で幼馴染の博徒を手に掛けざるをえなくなるという不始末を招く、自業自得のお話に見えてしまう。さらに、逆ギレして宿敵大場会ではなく、自分の組に殴り込むというオウンゴールを決める始末で、客観的に見ればかなり狂っている。

■実際、大場会の侵攻も意外と穏当な手法で、山本麟一も単純な悪役ではないし(まあ、丘みつ子を手に掛けるのは非道だが)、長門勇の逆襲もやりすぎの感を免れない。

■さらに、渡は長門の妹との恋愛関係があり、さらにその女は自殺しているし、それどころか、長門の実の妹ではなくて、なんとなく長門も妹を愛していたらしいという含みのあるお話が急に持ち出され、見ている方は困惑する。件の妹は渡と長門の三角関係のなかで自殺したことを仄めかすのだ。でも、そんな込い入ったことを急に持ち出されても、観客は混乱するだけだよね、普通。なにしろ長門にはもうひとり妹がいて、丘みつ子が演じるけど、ほとんど殺されに出てくるようなもので、無理があるし、何人も妹を出されても困る。というか、どうもこの脚本は”若書き”感が濃厚なのだ。

■一方、尾沢組には矢島というインテリヤクザがいて、これをなんと原田芳雄が演じる。冒頭に滔々と富士市の成り立ちや経済発展を説明してみせるが、結局富士市を舞台とした積極的な意味合いは発揮されない。当時、富士喘息とかヘドロ公害とかで注目もされていた町なのに、そんなことはほぼ風景に過ぎない。田子の浦のヘドロ公害の光景はさすがに映し出されるけど、それだけで、ドラマには絡まない、せっかく富士市でロケしているのにね。東映ならとこはちゃんとドラマに反映させるところだよね。原田芳雄も組内で渡を攻めたてて逆襲されるという役どころで、これも役不足の感が拭えない。まあ、逆に贅沢感が出るけどね。

■澤田幸弘の演出は相変わらず意欲的で、本作では手持ちキャメラを基調としている。こうした演出や映像スタイルは東映が早かったわけだが、東映ではどうしても映像的な質感が低下して安っぽくなるところ、日活は倒産寸前なのに技術的に持ちこたえている。照明が違うのは確かだ。ありきたりな撮り方はしないぞという意欲がこの錯綜するドラマを支えている。
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