ヤクザ映画と青春映画のホロ苦マリアージュ!『反逆のメロディー』

基本情報

反逆のメロディー ★★★☆
1970 スコープサイズ 84分 @アマプラ
企画:水の江滝子 脚本:佐治乾、蘇武路夫 撮影:山崎善弘 照明:高島正博 美術:千葉和彦 音楽:玉木宏樹 監督:澤田幸弘

感想

■1970年『斬り込み』で監督デビューした澤田幸弘の監督第二作で、俳優座原田芳雄を主役に抜擢し、本人の希望でGパン&Gジャン、長髪にサングラスでヤクザを演じきった記念碑的作品。実際のところ、澤田幸弘って、後年のテレビ映画の印象しかなくて、いわゆる日活ニューアクションって、あまりちゃんと観ていないので、未知の人だった。こんなにいい映画を撮っていたんだね。

■関西の組が解散、故郷の鹿島に戻った主人公だが、解散は名目で土建会社に鞍替えした巨大組織がコンビナート開発の利権に食らいついてきたために、親と慕った親分にドスを向けることになるというのがヤクザ映画としてのお話の骨格だが、実質的に本作はアウトローの青春映画として観られるべき映画。主人公は警察と経済ヤクザの闇の連帯によって追い詰められ、高度成長期の大規模開発によって姿を消しつつある鹿島の、故郷を象徴する砂浜に斃れる。

原田芳雄の相棒になるのがゲバ作と名乗る風来坊の佐藤蛾次郎。このゲバ作が本作のキーマンで、トリックスターとして青春映画の要素を象徴している。微温的な地元ヤクザの若者たちを焚き付けて無秩序に暴れさせ、全共闘運動も天王山を過ぎて学生運動も沈静化、過激派も内向して徐々に支持を失いつつあった1970年、昭和元禄の太平を貪ろうとする当時の日本の世情に火炎瓶を投げ込もうとする、たった一人の過激派だ。後に『野獣都市』でもテーマソングになったザ・ブルーベル・シンガーズの「疎外者の子守唄」(作詞:山上路夫)を弾き語りする場面は傑作だった。なんといっても歌自体が傑作だからね。

■さらにその周囲に、暴れ犬のチンピラヤクザ(地井武男)、その情婦(梶芽衣子)、はぐれ者(藤竜也)とワクワクする面々が集結。おもしろくならないはずがない。ポスターのビジュアルは古臭いヤクザ映画ではなく、アメリカン・ニューシネマっぽく、アウトロー映画として売っているが、この面々は当時の日活映画のアウトロー路線の文字通り顔だった。嫌味な刑事をネチネチと演じる青木義朗も出色だし、主人公の兄をこれまた非常にリアルに演じるのが梅野泰靖で、演技陣も非常に充実している。オールスターキャストといってもいいね。おまけに二瓶正也が名もないチンピラとして顔を見せる。時代だなあ。

■アマプラの放送原盤は一応リマスター版だが、相当古いリマスターらしく、解像度が高いのはいいが、全体に明る過ぎで肌色も白っぽい。20年以上前のネガテレシネのリマスターにありがちだった明るすぎる仕様だ。近年のリマスターはちゃんとフィルムルックな陰影が出るように調整しているからね。同じくアマプラに出ている『新宿アウトロー ぶっ飛ばせ』なんかちゃんと肌色も濃厚だし、フィルムっぽい陰影もちゃんと再現されている。

反逆のメロディ

反逆のメロディ

  • メディア: Prime Video
www.nikkatsu.com


参考

鹿島コンビナート開発は当時相当世間の注目を集めていたようで、数々の映画の素材となっている。(最近知りました)
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
澤田幸弘の監督デビュー作はこちら。こちらも立派な青春映画ですね。
maricozy.hatenablog.jp

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