宇宙からやって来た”倒木更新”の怪物!『モノリスの怪物~宇宙からの脅威~』

基本情報

The Monolith Monsters ★★★☆
1957 スタンダードサイズ 77分 @DVD

あらすじ

テキサス州サンアンジェロの片田舎の砂漠に散らばった謎の鉱物を拾った者たちが石化して死亡する怪事件が発生。鉱物は隕石の破片で、人体を含むあらゆるものからシリコンを吸収し、水に反応して成長することを突き止めるが、まさにそのとき砂漠に大雨が。鉱物は成長して巨大な黒い石柱となり、自重で崩落すると、その破片が成長を続け、ついに田舎町に迫る。おっとり刀で駆けつけた地元の地質学者や科学者がとりあえず身近な材料を駆使して黒い鉱物の弱点を探るが。。。

感想

■黄金の50年代にアメリカで量産された低予算のB級SF映画の一本ですが、これはななか趣深い良作。モノリスの怪物というアイディアが絶品で、石が成長して自重で崩落しながら移動して、その陣地を拡大していくというアイディアの一本勝負。他に類を見ないワン・アイディア映画で、今見ても案外古くない。もちろん、低予算なので、美術セットは最小限度だし、モノクロ撮影に特に凝った風もなく、淡々と普通に撮りましたって感じだけど、好意的に見ればドキュメンタリー的に見えないこともない。

■当然ドラマ的な要素はほぼゼロで、怪事件とその拡大と対策だけが描かれるが、ちゃんとサスペンスを生み出しているのが、何と言っても偉いところ。このジャンルの下手な映画だとそこで失敗しがちだが、本作の脚本と演出は成功している。監督はジョン・シャーウッドという人で、もっぱら職業助監督って感じのキャリアの映画職人。

■巨大なモノリスの怪物の活動を終盤まで見せなかったのも大成功で、クライマックスには待ちに待った大特撮が展開する。そのクオリティとボリュームも必要十分で、オーソドックスで豪快なミニチュアワークを堪能できる。随所に挿入される作画合成の精度の高さも魅力的で、モノクロスタンダードは解像度が高く、レンズの歪みも少ないので、パンフォーカスの合成がキレイなこと。なにしろ特撮はクリフォード・スタインだからね。

■ラストはアレをアレすべく大変なスペクタクルになるんですが、私有財産を勝手にアレすることはできないぞとか、町長の許可がまだ出ないぞといった世俗的な限界からくるサスペンスを乗っけるのも上手いですね。普通この手の映画ならラストで取って付けたような深遠なテーマや振り返りが語られる事が多いけど、本作はそんなもの一切なし。知事は現場をこの目で見ないと許可できないと言い、現場の役人や市民(田舎だから軍隊なんてそもそも無い!)の機転で事件が片付いてから、知事の許可がやっと届く。行政は忘れた頃にやってくる。まさに、コロナ禍のアベノマスクそのもの!凄いタイムリーな映画だな!SF映画凄い。

参考

■今になって知りましたが、本国では高画質なブルーレイが発売されています。しかも、画角は1:1.85のアメリカン・ヴィスタサイズじゃないですか!見事な高画質らしいぞ。悔しいなあ。

■と思ったら、ヴィスタサイズ版はスタンダード版をトリミングしたものと判明。もともと撮影はスタンダード、劇場上映時に上下にマスクをかけてヴィスタサイズで上映するというスタイルだった可能性がある。ブルーレイはそうした裏付けがあって、あえてヴィスタで収録しているのだろう。そうなるとスタンダードサイズ版も貴重だなあ。
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■この映画、かなり編集でバッサリ切られたフシがあり、そもそも主人公の職業が明らかでない。普通は冒頭に紹介シーンがあるのだが。背景に映る事務所の看板から役所の出張所のようだけど、地質学が専門らしく、やってる仕事は地質調査にも見える。ちなみに、トップに掲げた画像は実在する合成カットだが、ほんの一瞬しか映らないのだ。本邦のスタンダード版DVDではキャストの足元までちゃんと写ってます。

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