想定外の本格的音楽映画!『嵐を呼ぶ男』

基本情報

嵐を呼ぶ男 ★★★
1957 スコープサイズ 100分 @APV
原作:井上梅次 脚本:井上梅次、西島大 撮影:岩佐一泉 照明:藤林甲 美術:中村公彦 音楽:大森盛太郎 監督:井上梅次

感想

北原三枝が男勝りの音楽プロモーターを演じてタイトルトップだが、実質的にこれは狂言回しで、本当の主役は当時売り出し中の裕次郎。で、なんとなく音楽活劇なんだろうと思い込んでいたが、実は『エデンの東』の翻案で、ドラマ―人気投票全国一位になっても母親に認めてもらえず拗ねる兄が弟の作曲家デビューに陰ながら尽力し、その成功の陰で自らは音楽家としての生命を喪い、同時に母親の承認を得るという、いじましいお話がメインストーリーで、クライマックスはオリジナルなジャズ風交響曲の演奏会という、完全に堂々たる音楽映画の構え。
裕次郎北原三枝の恋愛劇はあまり発展せず、クライマックスはコンサートと母親の謝罪というわけで、北原三枝の存在はすっかり薄くなってしまう。裕次郎のドラムのライバルのチャーリーを演じるのは笈田敏夫という人で、実際のジャズ歌手。ドラムも本人が叩いてますよね。ただ、裕次郎の恋のライバルという風情ではなくて、単に気障な優男という感じ。裕次郎の弟役も青山恭二という人だけど、あまりに地味でこれまた配役に難あり。そもそも北原三枝のモデルは当時の渡辺美佐らしく、非常にサバサバとした理知的で勝気な現代的な女性像として魅力的なんだけど、ドラマ的にあまり生かされず、勿体ない感じ。一方で当時の日本ジャズシーンの有名どころがそこここに登場して、音楽映画としての質を贅沢に担保する。留置場の場面ではフランキー堺カメオ出演する!
■音楽映画と『エデンの東』を合体させた趣向はあまり成功しているとは思えないが、日本映画の黄金期ならではの豪華な舞台装置の意匠性や贅沢な音楽演奏に堂々と構えたセット撮影など、配役は小粒ながら、実に贅沢な映画。60年代どころか、まだまだ50年代で、その先年に経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言された経済成長うなぎ上りのイケイケの時代、そんなころのド派手なネオンサインが煌びやかな夜の東京のゴージャスさが心地よく伝わってくる。それは夢のように眩しく見える。

嵐を呼ぶ男

嵐を呼ぶ男

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

参考

さいきん井上梅次の映画が続くなあ。でも昔は土曜ワイドなんかで毎週のように新作を観ていたものです。
maricozy.hatenablog.jp
同じ時代の夜の東京のけばけばしさ、毒々しさを退廃の悪夢のように描いた傑作がこちら。
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ゴージャスな夜の東京といえば、どうしてもこの映画を忘れてはなりません。ミニチュア表現によるザ・東宝の夜。贅の極み。
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ナベプロ創世記の、これも結構贅沢な劇化。映画化してほしいなあ。
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