三倍泣けます!母もの映画の怪獣版!ウルトラマンタロウ『びっくり!怪獣が降ってきた』

■いまアマゾンプライムビデオで『ウルトラマンタロウ』が見られるので、いくつかつまみ食いして観たけど、着想は悪くないのにドラマ的に脚本の詰めが甘いものが多い感じだ。

■第1話『ウルトラの母は太陽のように』は別格に凄くて、とにかく面白要素をぎゅっと濃厚に詰め込んだ豪華巨編。おそらく通常なら2本分の予算で1話を製作したのではないか。とにかくどう見ても美術予算が膨大で、当時のゴジラ映画よりも金がかかってるのは確実。なので、美術の青木利郎としてはこちらの方が代表作だと思う。映画では低予算のものしか担当させてくれなかったからね。お馴染みのビル破壊の内引きのカットも、手前だけを薄く飾りましたというものでなく、ミニチュアの奥行きが凄いことになっている。ビル壊しの物凄いボリューム感。佐川和夫の伝説的な仕事。

■さて、何本か見た中ではやっぱり第20話『びっくり!怪獣が降ってきた』は何度観てもきっちり心に爪痕を残す。こどものころは心を病んだ母親、お杉さんの表象が怖くて、なんだか陰気な話だなあと感じていたものだが、大人になって見直すと、実に味わい深い秀作。

■監督の山本正孝が実相寺組から中堀正夫を呼んできて、同じく岡村春彦をゲストに迎えた意欲作で、脚本も同じく石堂淑朗という、明らかに狙った作品だけど、お話の方はちゃんと童話的な情緒を盛っている。(特殊技術はなぜか山際永三。ほんとなら監督と逆だよね。)

■たまたま通りがかったライドロンの子が花火を追って地球に落下するというのもあどけなく可愛くていいし、地球の重力を恐れて助けに降りられない母親が子を守るため雨を降らし、暗くて怖かろうと雷で地上を照らしてやるという母子怪獣の情愛の描き方がなんといっても秀逸だ。残念なのはそれをすべてナレーションで説明してしまうことで、本来ならZATの調査によって判明すればいいのだが、贅沢なことにタロウの場合は特撮の見せ場を多めにとる傾向があり、こうした性急な展開になる。

■さらに、そんな母子怪獣の事情をすぐには理解できないタロウに、ウルトラの母が、「タロウ、地球に住む者であろうと宇宙に暮らす者であろうと、親と子の愛情、母の愛情に変わりありませんよ」と諭す場面がうまくマッチしている。そもそもお杉という母親は子を亡くして心を病んでしまったのだが、母を求める子怪獣の姿に直感的に感応して、大気圏で子を気遣う母の存在を感知する。「いけませんよ。あんなに悲しげに泣いている子供をいじめようなんて。母親だってあんなに困って泣いているじゃありませんか」と、そのことを散々タロウに訴えるのだが、なにしろ病んでいるので論理的に説明はできないし(病んでなくても論理的には説明しようがないか?)、未熟なタロウは母のそんな気持に気づくことができないのだ。このように本作は三組の母子関係が重ね合わされているのだ。どうです、案外込み入った話でしょ。母が太陽のように空高くから子の成長を見守る(決して干渉はしない)という本シリーズの基本構図が怪獣側にも敷衍されたという意味で、実はシリーズ中でも随分と重要な位置づけにあるエピソードなんですよ!

■確かに石堂淑朗は『帰ってきたウルトラマン』でも女が霊媒的に怪獣と繋がってしまうという発想のエピソードがあって、ある意味ご都合主義的に見えなくもないが、非常にユニークな視点だと思うし、もっと掘り下げてほしい路線でもあるのだが、そうした「女と怪獣」路線の中ではもっとも成功した作品だと思うなあ。