本気出すと凄い笠原良三の社会派落語映画『羽織の大将』

基本情報

羽織の大将 ★★★☆
1960 スコープサイズ 108分 
脚本:笠原良三 撮影:西垣六郎 照明:西川鶴三 美術:河東安英
音楽:佐藤勝 特殊技術:東宝技術部 監督:千葉泰樹

感想

古典落語好きの大学生が落語家に弟子入りするが、そのうち器用さからマスコミで売れっ子になり、ついに友人の選挙活動に協力するが。。。という笠原良三のオリジナル脚本。邦画斜陽期は始まっている時期とはいえ、東宝が潤っていた時代なので、実に贅沢な小品映画。制作は宝塚映画だけどね。
■いまどきのお仕事ドラマのはしりと言えるかもしれない落語入門映画で、弟子修行の様子を面白おかしく見せるし、桂文楽や安藤鶴雄は本人が登場するし、主演のフランキー堺は非常に上手いし、もうため息が出るほど贅沢な作り。笠原良三は喜劇映画を書きまくった人だが、喜劇映画には哲学を持っていた人なので、本作などは本当に書きたくて書いた脚本じゃないかな。
■フランキーの妹として原知佐子が登場して、主人公の信念に痛烈な批判を加える。古典落語なんて今のの時代と繋がった批評性が皆無じゃないかというもので、古典落語至上主義だったフランキーは大きく落ち込む。彼の悩みと並行して学生運動に邁進する原知佐子の姿が対置されて、60年安保の姿を意外にも本気で描いているのだ。ラストも、安保のデモで行進する原知佐子と、高座で迷いを振り切って古典落語に勤しむ兄の姿を完全に対比して60年を描いている。学生運動を風俗として描くのはいいけど、ここまで本気に取り上げると東宝としては態度が硬化しそうなものだけど、笠原良三、よくぞ書いたね。隠れた名作じゃないか。
■非常によくできたオーソドックスな脚本だし、配役は脇役が充実しているし、誰が観ても納得の堂々たる、そして軽妙洒脱な娯楽映画だけど、『羽織の大将』というタイトルはいただけませんな。これじゃ映画が泣く。

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