社会派実録映画ではなく、これはハードボイルド映画『女神の見えざる手』


基本情報

Miss Sloane ★★★★
2016 スコープサイズ 132分 @DVD

感想

■実は社会派実録映画と誤解していたのだが、なんとヨーロッパコープ製作の社会派フィクション。なんでヨーロッパコープなのかは不明だが、非常に真面目な映画で、しかも実に見事な娯楽映画。さらに、あまり観客の共感を得られない特異なキャラクターの女性主人公をハードボイルドに描いた、実はハードボイルド映画。

■銃規制法案の議会可決を勝ち取るため、あらゆる手を使って、賛同議員を確保しようとする女ロビイストの孤独な戦いが描かれるが、目的のためなら手段を選ばない彼女は、当然のことながら銃規制反対派から潰されそうになる。。。

■ジョナサン・ペレラという人のオリジナル脚本。面白話術の粋が味わえる傑作で、いやあ久しぶりに虚を突かれて唸りました。嫌味なほどに賢くて明晰な女性で、しかしながら平気で他人を利用する倫理観を欠いた野心家で、人格障害者という印象のスローンという主人公を、ある意味突き放した描き方をしており、その真の動機を明確にしないため、映画はハードボイルドの気配を帯びる。一方で、男娼とのやり取りの中で、一片の人間味や弱みを垣間見せるさらっとした描き方なども上手いもの。社会派サスペンスというよりも、スローン女史の特異な人格に基づく行動を描いたハードボイルド映画だと思う。

■もう、とにかく予備知識なしで観ることを強くお薦めする。観ないと損する種類の映画ですよ。映画館で観たかったなあ。必見!

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