大島渚によるアイドル映画の試み或いは単なる沖縄観光セクハラ映画?『夏の妹』

基本情報

夏の妹 ★★★☆
1972 スタンダードサイズ 96分 @APV

感想

■何故かなかなか観る機会が無かった本作だが、なんとアマゾンプライムビデオに入ってしまったので、さっそく観たよ。他にも『儀式』も入っているから驚き。吉田喜重もお願いしますよ。

■返還後の沖縄に腹違いの兄を探してやってきたスータン(素直子)とその継母になる予定の桃子。でも、その兄は桃子をスータンと勘違いしていて...まるで創造社一行による沖縄観光映画の趣きだが、これが意外にも実に良い。武満徹のリリカルなテーマ曲がこれまた絶妙で、もっと注目されるべき映画だ。

■なんといってもスータンを演じる栗田ひろみが抜群のアイドル性を発揮して、まるで大林宣彦の映画のようじゃないか。対するりりィが当時なんと20歳という若さで、とてもそんな娘には見えない憂いを帯びて、ハスキーボイスもセクシーでなんという存在感。スータンの父親と石橋正次の間で揺れ動く女心をフォトジェニックに演じる。この映画、撮影も抜群で、まるでコマーシャルフィルムのようなハイセンスな映像を繰り出す。大島渚はいったい何を狙ったのか。

■そんなアイドル映画風の大林ワールドにも似たCFタッチの映画に途中から創造社メンバーが乱入して例によって沖縄の明るいビーチで猥歌や猥談を披露するという、意味があるのか無いのかよくわからない渚ワールドに変転する。しかしその中心にいるのは未成年、栗田ひろみなので、単なるセクハラにしかみえないのが妙な感じだ。世代断絶や政治的な含意というよりも、明らかに日本映画における一つの時代の終焉を象徴している気がする。このあと、大島渚は創造社を解散したんだよね。政治の時代は去り、CF的にファッショナブルな映像の時代が訪れる、その露払いを演じて見せた大島渚の真の意図は不明だが、とにかくこの映画の瑞々しさは異様なほどだ。

名画座で上映する際は、ぜひ『ゴジラ対メカゴジラ』との同時上映を実現してほしいなあ。



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