大震災発生に暴走する孤独な悪『大地震』

基本情報

地震 ★★★
Earthquake
1974 スコープサイズ 123分 @APV

感想

■昔はよくテレビで放送してましたよね。でも、途中の見せ場をつまみ食いしただけで、全編きちんと通して観るのは実は初めて。この期に及んで初見とは、不思議な感慨がある。
■確かに東宝の『地震列島』はこの映画を下敷きにしており、チャールトン・ヘストン勝野洋エヴァ・ガードナー松尾嘉代、ジュヌヴィエーブ・ヴィジョルドが多岐川裕美という構図で、そのまま移植されている。権高の正妻と若い愛人という構図。でも、ドラマとしては新藤兼人の方がよく描けているからさすが。本作のヘストンとガードナーの最期なんて実にあっさりしているし、エピソードとして積極的な意味づけ、テーマ性が無い。そこはさすがに新藤兼人なので、『地震列島』にはちゃんと筋が通っている。
■しかし、この映画で一番感心したのは、スーパーの店員が大地震発生時に予備役の兵士として治安維持にあたるのはいいけど、日頃のうっ憤を晴らすために自分をゲイ呼ばわりした近所の知り合いたちを射殺するし、スーパーの常連客だった娘を手籠めにしようとするし、非常事態に便乗して日頃の願望をかなえるべく見事な悪の発露を見せるというエピソードで、実際のところ、本作で最も真情溢れるエピソードになっている。こうした表現は確かに東宝特撮スペクタクルではなかなか描かれないからユニークに感じたし、この青年の鬱屈した心情は泣かせるものがある。決着をつけるジョージ・ケネディはまるでイーストウッドのようだ。
■ミニチュア特撮も当然ふんだんに披露されるけど、いまいち演出意図にまとまりなく、スペクタクルとしては腹持ちが悪い。むしろ作画合成の数々が見ものだろう。クライマックスには待ちに待ったダム決壊場面が置かれ、巨大なミニチュアワークの味もあるし、フルスケールの特殊効果も豪快でなかなか。でも、ドラマ的には下水道で濁流に流されるという小さな仕掛けに集約されるので、さすがに竜頭蛇尾の誹りを免れない。
ジョン・ウィリアムズの楽曲もテーマ曲は勇壮なのに、劇中ではあまり目立たず、勿体ないこと。マーク・ロブソンは結構いい映画を撮っていた人ですが、脚本が脚本なので、いいとろころ無しですね。

参考