Body of Lies
2008 スコープサイズ 128分
DVD
■これはさすがにリドリー・スコットというウェルメイドな良作。ウィリアム・モナハンの脚本も良く出来ている。中東で対テロ戦争のために犠牲もいとわないエグイ任務を実働するブラピと本国から監視しつつ指令だけ発進するクロウの対比がよく出来ているし、原作者由来の中東でのスパイ活動の実態の斬新さもあり、クライマックスの捻りも効果的で、非常によくできたサスペンス映画。各人が駆使する嘘の効用も対比され、含意が深い。
■アラブ世界についてアメリカは知ったかぶりで対テロ戦争と豪語しているが、アラブのことはアラブに聞けというのが実情なのであって、ヨルダンのインテリジェンスの方がよっぽど巧みな戦略を持っているということを原作者の現地での経験に基づいて描き出す。その視点のリアリティは我々一般観客にとっては目から鱗だし、サスペンス映画としての構成もバッチリ。これは面白い。CIA工作員ブラピの成長物語でもあり、アメリカのやり口の胡散臭さを暴く告発映画でもあるという、オトナ好みの映画。
■しかも、メイキングが面白く、リドリー・スコットはロケ地としてモロッコがお気に入りらしく、本作も主要な場面は全てモロッコのロケとロケセットで撮影されたらしい。あの市場の場面も全てロケセットという。リドリー・スコットの映画作りの経済的合理主義がよく分かり、非常に興味深い。複数キャメラで撮影し、基本的に一発撮りで、編集でリズムを作っていくという撮影スタイルが確認できる。