ディミトリアスと闘士 ★★★☆

Demetrius and the Gladiators
1954 スコープサイズ 101分
DVD

シネマスコープ第1作の『聖衣』のストレートな続編。というか、明確に2部作という製作意図が見える大作史劇。大掛かりな美術セットも前作のそのまま流用なので、実際的には2本をほぼ同時に撮影したのではないか。前作で中途半端に退場してしまったヴィクター・マチュアが主演で、カリギュラ皇帝との間でキリスト教の信仰を巡って幾たびも確執が起こり、そのたび奴隷闘士に落とされるという活劇で、前作がメロドラマであったのと対照的に、今度は活劇で燃える。

ヴィクター・マチュアを誘惑するスーザン・ヘイワード演じる悪女という構図はそのまま『サムソンとデリラ』の再演の趣だが、物語も終盤に近くなって、信心深いヴィクター・マチュアがあろうことか神を捨てる急展開になり、一体お話はどう着地するのかとひやひやしていると、想いも寄らぬ怒涛の展開で大団円を迎えるという、かなりよく出来た活劇映画である。アクション映画としてのカタルシスは120%。後の『スパルタカス』のお手本になったことは間違いない。

■前作のジーン・シモンズ、『サムソンとデリラ』のへディ・ラマーなどに比べるとスーザン・ヘイワードはおばさん過ぎていささか興ざめだが、デルマー・デイビスの演出よろしく、幕切れの彼女の複雑な表情の点描もばっちり。前作で信仰に殉じたガリオの後を継ぐように護民官となったヴィクター・マチュアが颯爽と宮殿を出てゆくカットは、惚れ惚れするカッコよさ。本来『聖衣』と本作は、60年代なら『クレオパトラ』級の超大作として製作されたかもしれない。B級史劇と思いきや、やけに面白い一作。でも、映画史的には完全に忘れられた映画ですな。



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