人生の特等席 ★★★☆

Trouble with the Curve
2012 スコープサイズ 111分
DVD

■イーストウッドは監督せず、俳優に徹しているのだが、見事にイーストウッド映画そのもので、大いに堪能した。監督はロバート・ロレンツというイーストウッド組の裏方を取り仕切る大番頭だが、演出も非常に上出来で丁寧。ランディ・ブラウンの書いた脚本もよく出来ていて、やけに地味な渋い語り口だなあと思ってみていると、終盤に綺麗に畳み掛ける逆転劇が胸のすくカタルシスをもたらすというオーソドックスな仕上がり。

■イーストウッドの完全主演ではなく、むしろ娘役のエイミー・アダムスが実質の主演。エリート弁護士の彼女が父親との関係を見つめなおして本当の自分の居場所を見つけるまでの物語で、なんとも年寄り向けの腑抜けたタイトルと思われた『人生の特等席』という言葉の本当の意味をサラリと明かすあたりが非常にうまい。というか、邦題のつけ方が大成功している珍しい例だろう。ほんまに良い映画です。