るろうに剣心 ★★★

るろうに剣心 通常版 [Blu-ray]
るろうに剣心
2012 スコープサイズ 134分
DVD
原作■和月伸宏 脚本■藤井清美、大友啓史
撮影■石坂拓郎 照明■平野勝利
美術■橋本創 音楽■佐藤直紀
アクション監督■谷垣健治
監督■大友啓史

■キムタク版『宮本武蔵』がチャンバラ映画として秀逸だったので、同じ谷垣健治が先にアクション監督を担当した本作をやっと観ることができた。本作なくして、キムタク版『宮本武蔵』はなかったはずだ。
■幕末の人斬りマシーンが、明治の世に流浪人として彷徨ううちに争いに巻き込まれてゆく様子を、まさに漫画的なキャラクターそのままに実写化した、端的に言って、変な映画である。とにかく主人公剣心の実在感がゼロパーセント、というかマイナスである。原作漫画ではもう少し信じやすい絵柄とか工夫とかがあったはずだが、映画では漫画そのままを提示して、原作どおりだから信じろ、と無理強いする。到底大人の鑑賞に耐える映画ではない。はずなのだが...
■しかし、本作は活劇映画に徹することにした時点で、戦略的に成功したのだ。アクション演出は香港映画そのもので、伝統的な時代劇の剣戟の世界とは大きく異なる。しかし、確実にチャンバラ映画の刷新が行われている。『宮本武蔵』と比較すると、キャメラワークとか編集の作法がかなり異なり、同じアクション監督の演出にしても、『宮本武蔵』の方がよりメリハリが効いていて、鮮烈であった。本作の編集は近年売れっ子の今井剛、『宮本武蔵』は東映京都の米田武朗だが、今井剛の編集はハリウッド調でカットを刻みすぎているし、スピード感を強調しすぎの気がする。対して米田武朗の編集はメリハリ重視という印象。
■なにしろ、主人公が「・・・でござる」とか、そのまま喋るもんだからバカにしてんのかと普通の大人なら腹も立つところだが、最後まで見ればちゃんと活劇としての筋は通っているから、案外気持ちの良い単純娯楽活劇になっている。昔の東映なら90分程度のお話しかないのだが、今時風のゆるふわ雰囲気演出のせいで随分長尺になってしまった。
香川照之も完全に活劇映画のステロタイプの悪役を遊びながら演じていて、これはこれで悪くない。何故か受け口にして、伊藤雄之助ごっこに興じている。何故かは知らんが、とにかく緩さが身上の映画だからこれでいいのだ。
■しかし、撮影と照明のスタッフワークは見事で、ビル・コン製作の世界市場向け中国映画みたいに、ハリウッドテイストのルックを作り上げている。重厚なドラマを見せる時代劇には不似合いだが、チャンバラ映画のルックとしては上々。撮影の石坂拓郎は、なんと山田太一の子息であるそうな。
■明治の時代に人を殺さない剣客として生きるという謎の境遇の主人公を巡ってはもっと濃い物語が立ち上がるべきだが、そこは佐藤健の演技も含めてやはりゆるふわムードなんだな。これもご時勢か。

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