黒い報告書 女と男の事件ファイル3 誤解 ★★★☆

■『たかる女』脚本・日比野ひとし、監督・深作健太、『便利な女』脚本・日比野ひとし、監督・望月六郎

たかる女

■シリーズのフォーマットを作ってきたメイン監督である深作健太はホントに頑張っていると思う。『たかる女』は週間新潮の『黒い報告書』では作品化されていない実際の事件を元にドラマオリジナルで創作したエピソード。

便利な女

■いっぽう『便利な女』は週間新潮に実際に載った『「失恋OL」がすがった恋愛掲示板の「キラー」』を原作とするエピソードで、望月六郎が初登板。望月六郎の映画(ドラマ)を観るのも何年ぶりだろうか。が、これがとにかく傑作。

■男を寝取られた女が、ネットで殺しを請け負う「キラー」という男に寝取った女を殺害させたという事件を、編集者の石黒賢とアイドルのブログのゴーストライターの女(北川弘美)が取材し、殺しを依頼した女と請け負った男の一夜の邂逅の中に、切な過ぎるメロドラマを空想するというドラマだが、とにかく実質主演の國元なつきの地味で男にいいように利用されてゆく流される風情が最高。さらに後半にやっと本格的に登場して、短い出番のなかで圧倒的な存在感を刻み付ける柄本佑がさらに凄い。

■匿名掲示板に巣食って殺人代行を淡々と請け負う孤独な男、そして彼と逢い、彼に促されるままにセックスを受け入れる女。それは彼を裏切った男の身勝手な行為と似ているはずなのに、全く逆のベクトルに彼女を誘ってゆく。その不思議を柄本佑の演技がリアリティをもって支えている。彼と彼女のベッドシーンは見ていて非常に切ない。そして、二人の迎える現実的には当然の報いが、あまりにも残酷に感じられ、切なく心をかきむしる。この感動は良くできたロマンポルノそのものだ。

■日比野ひとしの脚本もよく出来ていたと思うし、望月六郎の演出がまったく映画そのもので、大変な充実ぶり。柄本佑がポケットから紙を取り出して台詞を喋りだす場面、國元なつきが警察の前で昏倒しながら、「助けて、キラー」と柄本佑を呼ぶ場面など、圧巻な場面が続々登場するから、1時間弱のドラマなのに、完全によくできた映画を観ている気分だ。凄い。

© 1998-2024 まり☆こうじ