コースト・ガード ★★★☆

COAST GUARD
2001 ヴィスタサイズ 94分
DVD

■キム・ギドク初体験ですが、十分狂った感性を感じることができましたよ。まあ、人のことを狂ったなんて言っちゃだめですよ。監督が狂ってるんじゃなくて、主人公が狂っているだけで。
■誤って民間人を射殺してしまった兵士と眼前で恋人を殺された女がともに狂ってゆくというシリアスなお話を、適度な残酷描写と人を食った笑っていいのかどうか悩むシュールな演出で描く、やっぱりどこか変な映画。いわゆる真面目な社会派映画にもなりそうなところを、キム・ギドクの特異な感性で奇妙な按配で描く。そもそも、映像のルックが近年の韓国映画のハリウッドスタイルではなく、往年の１６ミリ撮影のVシネマみたいなラフなもので、照明も必要最小限という感じの低予算ぶり。しかし、主演はチャン・ドンゴンが志願して演じている。
■そもそも主役の兵士は初手から頭のおかしい感じで登場するから、シリアスな状況と展開に関わらず、何か深刻度が感じられない。実際に韓国で起こった事件をベースにしているが、リアルなお話ではなく、やはり寓話として作られている。北と対峙するはずの軍隊がいったい何と戦っているのかと、軍隊組織の空虚さ、バカバカしさ、残酷さを皮肉な視点で描く。