闇の子供たち
2008 ヴィスタサイズ 138分
DVD
原作■梁石日 脚本■阪本順治
撮影■笠松則通 照明■杉本崇
美術■原田満生 音楽■岩代太郎
監督■阪本順治
■タイで起こっている児童買春、臓器売買等の児童虐待を告発するきわめて異色の社会派映画で、正直なところ、よくぞ映画化したものだと感心するばかりだ。そして、観た者は心の底から暗澹たる気持ちで映画館を後にするはず。これ映画館で観ていたら、しばらく何も手に付かなくなると思うほどの衝撃作。テレビの人気タレントが集結しているからといってお気軽な気持ちで観ると、痛撃を食らうことになる。文字通りの意味でトラウマ映画といえるだろう。でも原作はもっと容赦ないものらしい。
■娯楽映画としての話術の巧みさでは『トガニ』などのほうが上出来だが、本作はもっとドキュメント寄りで、さらに残酷でえげつない。東南アジアで起こっていることを容赦なく観客に突きつけるその刃先の鋭さは並大抵ではない。正直、阪本順治の映画は当たり外れも多いし、演出的に安定感ある的確さを期待しがたい印象があり、本作も例外ではないのだけれど、ラストに映し出されるものは観客を奈落の底に叩き落す破壊力を秘めている。『オレンジと太陽』『トガニ』ときて、本作でも人類におけるペドフィリアの問題の根深さを思い知らされる。生体からの臓器摘出の問題が本筋かと思っていたのだが、実はペドフィリアの方が本筋というのはちょっと意外だった。
■江口洋介は、もちろんデビュー作の『湘南爆走族』から見ているが、個人的には好みの役者ではないし、NGO主催の集会で泣き崩れる場面は演出も含めてどうかと思うが、それでも、この映画で主役を演る”男気”には素直に賞賛したい。