恍惚の人 ★★★☆

恍惚の人 [DVD]

恍惚の人 [DVD]

  • 発売日: 2005/10/28
  • メディア: DVD
恍惚の人
1973 スタンダードサイズ 102分
NHK BS2
原作■有吉佐和子 脚本■松山善三
撮影■岡崎宏三 照明■榊原庸介
美術■小島基司 音楽■佐藤勝
監督■豊田四郎

■昭和48年の東宝配給、芸苑社製作の映画だが、モノクロ、スタンダードという当時でも珍しいスタイルで製作されている。もちろん低予算映画だが、一応セット撮影は本格的に組まれている。何より、解像度の高い美麗なモノクロ撮影の成果が見所。モノクロ撮影のおかげで、今見ても案外古びて見えない。むしろカラー撮影の方が家内の調度とか質感が古臭くなってしまう傾向があるから、モノクロ撮影はもっと見直されるべきだと思うがなあ。
■当時59歳の森繁が83歳の痴呆症老人を演じるという余裕のある配役で、東宝娯楽映画として面白おかしく鑑賞できるように作られているから感心した。森繁もリアリティよりも、ところどころに諧謔味を加味した芸で見せる。それはメソッド演技的なものとは異なるが、やはり芸の力である。老人介護の地獄をコミカルに見せるというのが大人の映画作りの余裕。しかも、篠ヒロコをお色気要員として投入して、むき出しの生足を舐めるように撮るというサービス精神まで旺盛だ。娯楽映画かくあるべしという好見本。
■恍惚の境地に入った老人は何を思い、何を見ているのかと、その精神世界の現実世界への反映(行動)のなかから読み取ろうとする意欲的な映画である。当時、こうした老人を家庭で介護できなければ精神病院に引き取ってもらうしかなかったという現実に恐怖する。
■名女優高峰秀子も当時49歳なのですっかりおばさんではあるが、それでも着ている衣装はかなりハイセンスで、当時のこととてミニスカートまで披露してくれたり、メガネ姿まで見せてくれるので、デコちゃんファンは七変化が楽しめる仕掛け。見事なサービス精神だ。

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