天草四郎時貞
1962 スコープサイズ 101分
DVD
脚本■石堂淑朗、大島渚
撮影■川崎新太郎 照明■中山治雄
美術■今保太郎 音楽■真鍋理一郎
監督■大島渚
■大島渚が東映京都に残した問題作。天草の乱を素材にしながら、やっていることは、学生運動の組織体におけるヘゲモニー争いの軋轢を重ね合わせるというもので、流石にドラマとしての普遍性に大きく欠ける。そうした見立ても決して悪くないのだが、普通の東映の観客が理解できる程度の普遍性、一般性を一切考慮していない。特に難解な映画というわけではなく、ところどころは演説合戦が盛り上がって、イケイケという気分にもなってくるのだが、根本的に活劇を作ろうとしていないので、カタルシスは無い。そりゃ打ち切られるのは当然。それでも大島渚を呼んでくるだけで東映凄い!というイメージは残るというイメージ戦略?
■島原のキリスト教徒を焚きつけるアジテーター浪人を戸浦六宏が演じて、これはさすがに見せるし、盛り上がる。大川橋蔵と戸浦六宏の一騎打ちが活劇のクライマックスになるが、まあ、活劇を見せようという、カタルシスを味わわせようという演出意図が無いため、え、終わり?という展開。『日本の夜と霧』くらいに華麗なテクニックを見せてくれれば、それなりに満足もするのだが、そこは大きく及ばない。
■硬質でコントラストの高いモノクロ撮影は大作らしく意欲的で、照明も東映京都のルーチンを大きく踏み外したものだ。しかも、長廻しで息苦しいほどに粘る演出の気魄も感じることはできるのだが、島原の乱を扱ってこの程度のドラマでは勿体無さ過ぎる。ドラマが学生運動家たちの身内のチマチマしたお話に矮小化されてしまったのは残念なことだ。
参考
こちらのほうがよっぽど普遍性があります。こういうフィクション化の粋さが大島渚にはなくて、エネルギッシュではあるが、後に続く素形とはなりにくい。継承されず、ずっと孤高のまま。それが望みだったかもしれないが。
maricozy.hatenablog.jp