2011年ベストテン

昨年観た映画のベストテンをまとめてみた。邦画、洋画問わずに並べてみたが、見事に洋画ばかりになってしまったのには、我ながら驚いた。しかも、シネコンで上映しているメジャー映画ばかりだ。
邦画界は興業的にも厳しそうだが、なにしろ作品のクオリティに大きな問題がある。制作予算の逓減が続き、ゴージャス感の味わえる邦画が激減した。東映はこれまでVシネマで出していたような低予算ヒーロー番組を映画館で、しかも1本立てで出すようになり、それが会社の屋台骨を支えているという呆れた状態。しかし、それでも映画を製作してそれなりに成り立っているだけかろうじて健全とも言え、東映という企業のしぶとさには感心もするところがある。邦画はインディーズ系が刺激的なのだと思うが、せっかくの週末に観に行く娯楽にしては、豪華さとか華麗さが皆無なのは辛い。日本の芸能でゴージャスさとか贅沢さを求めれば、映画より舞台に目が向いてしまうのだ。

  1. 『モールス』...リメイク作とは知ったうえで、それでもジャンル映画の歴史的傑作だと思う。
  2. 『わたしを離さないで』...文字通り身を切られるように痛い映画。れっきとしたジャンル映画の傑作。
  3. X−MEN ファースト・ジェネレーション』...人類の差別と偏見と不寛容の歴史を軽妙にポップに炙り出す離れ業。
  4. 英国王のスピーチ』...シネコンで観たら、口腔内の湿り気まで表現する音響の凄さに感動した台詞劇。
  5. 『ミッション:8ミニッツ』...非常に軽妙洒脱なSFサスペンスだが、この達成感は小さな衝撃だった。
  6. ゴーストライター』...今時、こんな古風なサスペンス演出が成立するとは。ポランスキーはやっぱ凄かった。
  7. 『生き残るための3つの取引』...韓国映画のえげつなさが荒削りに表出された社会派犯罪映画。社会の底辺をさり気なく描く手際に痺れた。
  8. 『ファースター 怒りの銃弾』...とにかく楽しくてウキウキする純粋活劇。いま、ドゥエイン・ジョンソンはアメリカ映画の宝だ。
  9. 『ザ・タウン』...イーストウッドを継ぐのは俺だ!ベン・アフレックが犯罪活劇の殿堂に正面突破で殴りこんだ。
  10. 復讐捜査線』...たまたま3・11の年に公開されるという因縁。男くさい社会派活劇の快作。 

次点は「ザ・ウォード 監禁病棟」、困ったことに邦画ではめぼしいものがなく、かろうじて「信さん 炭坑町のセレナーデ」と「八日目の蝉」が琴線に触れる程度だった。「信さん 炭坑町のセレナーデ」は凄く変な話だが、平山秀幸の腕前を再確認した。
昨年の一番の事件は、NHKが舞台中継の枠を大幅に削減したことで、4月以降ほとんど舞台中継が無くなってしまった。邦画が不甲斐ない分、舞台の面白さに注目していただけに、この仕打ちは非常に痛恨だった。日本のエンターテイメントに華やかさとか楽しさとかテーマ性の深さなどを求めると、どうしても演劇に向かわざるを得ない現状は、当面続くことだろう。若手の役者たちも映画やテレビでは演技の勉強ができないから、どんどん舞台に進出しているが、この傾向も続かざるをえないだろう。
正直、最近のハリウッド映画も青息吐息なのだが、日本映画のここ2、3年の体たらくは非常にヤバい状態だと思う。大きな地崩れが起こりそうな気配だ。

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