『Can You Dream? 夢を生きる』

宝塚歌劇初の女性演出家となった植田景子の、採用に至るまでの根性物語が興味深いエッセイ。5回目のチャレンジでやっと採用に至る、若き日の苦闘の日々には共感できる部分が多い。男女雇用機会均等法の施行後の老舗企業の方針転換に根気よく付き合ったおかげで、ついに演出助手として採用されるに至るわけだが、その間に東京や大阪で演出助手としての経験を積み、舞台スタッフに人脈ができていたことで掴むことのできたパスポートだったのだ。このあたりの顛末は、こうした業界にこれから挑もうとする若者たちにとっては、非常に貴重な記録だろう。才能は重要だが、人脈とか縁故も同じくらい重要だということだ。
■この前、「ハプスブルクの宝剣」を観て、植田景子の作、演出に感心したわけだが、主人公は原作小説では隻眼だったらしい。舞台では片目で演じるのは危険なのでやむをえず眼帯なし、隻眼の設定なしで演じることになったが、演じる柚希礼音は、そう見えるように演じればいいんですね、と返したという芸談が素晴らしい。男前だよ、柚希礼音!

Can you Dream?

Can you Dream?

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