DON'T BE AFRAID OF THE DARK
2012 ヴィスタサイズ 100分
Tジョイ京都(SC11)
■デル・トロが「地下室の魔物」というテレビ映画のカルト作をリメイクしたという本作、脚本もデル・トロが書いているが、脳みそを使わずに手だけで書いてみる実験か?と勘繰りたくなるスカスカな脚本。ドラマもなければ、サスペンスもなく、伏線も捻りも無いという、凄い脚本。それを素人監督のトロイ・ニクシーという人が撮ったため、なにも無い脚本を引き延ばせるだけ引き延ばして、むやみに冗長な映画になってしまった。
■しかし、この映画が奇妙なのは、脚本がC級なのに、技術スタッフがA級だったことにより、映像のルックがかなり凄いことになっていることだ。映画の半分くらいは闇の中で、その闇をねっとりと濃厚な味付けで描き出して見せる。普通ならそこにサスペンスを込めるわけだが、ここではそんなものは見当たらず、ただあるのは濃厚でクリーミーな闇の気配だけ。そして、この映画を観終わると、あまりのなんにも無さに、妙な清々しさを味わうことになるのだ。こんな経験、なかなかできるものではない。
■そもそも、怪奇映画なのか、ダークファンタジーなのか、路線を明確にしなかったための失敗だと思うし、ジョー・ダンテにでも撮らせれば、もっとチャーミングな映画になったはずだが、まあ、これはこれで貴重な映画体験ではある。やたらとコテコテにいらんものまで付加しないと気が済まない貧乏性の映画が多い中、ここまで、何もない映画は、逆に凄みを感じる。何かあるに違いないと、退屈しながらも見続けていると、結局何も無かった!という事実に驚愕しつつ、それでも悪い気はしないという、希有の映画だ。