五番町夕霧楼 ★★☆

あの頃映画 「五番町夕霧楼」 [DVD]
五番町夕霧楼
1980 ヴィスタサイズ 130分
DVD
原作■水上勉 脚本■中島丈博
撮影■坂本典隆 照明■八亀実
美術■横山 豊 音楽■岸田智士、田辺信一
監督■山根成之

佐久間良子版は遠い昔にテレビで観たきりだが、それにしてもこのリメイク版の映像のルックのかさかさ加減は凄い。80年代初頭の松竹映画の質感はこの程度だったという見本のような映画。監督は郷ひろみ主演で鮮烈な青春映画を連発していた山根成之だが、どうも素材と資質がマッチしていないようだ。美術装置の質感が乏しいとか、照明がベタベタだとかいちいち言うのも憚られるくらいの貧弱さ。70年代の日本映画の貧相さのしっぽを引きずっている映画だ。
■しかし、もともとのお話に強度があるし、脚本は中島丈博なので、後半、奥田英二に焦点が当たるあたりはさすがに盛り上がるので、決して悪い出来ではない。主演の松坂慶子は、ファーストカットの髪型から昭和25年には見えず、違和感バリバリで、結局情念とか情感を演じることには成功していない。表情のない顔のアップショットは肌が陶器のようで、血が通っているように見えない。
■ラストの鳳閣寺の炎上は、ほとんどフルスケールの装置を燃やしており、井上泰幸の作ったミニチュアはあまり出てこない。ミニチュアは炎が大きすぎるフルショットに使用されている。ちゃんと特撮スタッフを立てる予算も無かったらしい。

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